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最愛 【黒子のバスケ】

第23章 After the rain


明日の確認をする数名のスタッフと、あたしとパットだけが残ったペントハウス。

メイク道具を1つずつ拭いて片付けてると、涙が勝手に溢れ出してぼたぼたとあたしのメイク道具を濡らしていった。



『よく頑張ったわ。こっちにいらっしゃい』


あたしはチーフでここはまだ仕事場なのに、優しい声にその胸を借りることを迷わなかった。


気を抜くのが早かった
部屋に戻るまで気を抜いてはいけなかった



『あなたは仕事に徹した。さすがあたしの見込んだ子は違うわ。あたしはあなたを弟子にできたことがメイク人生で一番の成功』


優しく背中を撫でてくれる手と、これ以上ない嬉しい褒め言葉にあたしは涙が止まらなかった。



どうしてパットの前だとこんなに甘えてしまうんだろう。


両親の前だと照れくさくて隠すこともある涙を、パットの前では我慢できない。

仕事中に仕事のことで泣くとすごく怒るけど、それ以外であたしが泣くと必ずこうやって背中を撫でてくれる。



ひとしきり泣いて少しだけすっきりして、さっき涙で濡らしたパレットをもう一度拭いた。


開いてなくてよかった。
涙が入ったらコスメが劣化してしまう。


全てを片付けて、残ってるスタッフに挨拶を済ませてパットと一緒に控室に一度荷物を取りに入った。



『ダイキが部屋で待ってるって言ってたから送るわ。帰ったらダイキに全部ぶつけてやりなさい。嫌なことも辛いことも全部吐いちゃいなさい。そして、また明日すっきりしてメイクして、なんか言われたらまた吐き出して…そういう嫌な現場もあるわ。だけどどんな現場もそれが経験になって強さになる。強いってことは優しいって事よ』

『はい』



パットの言葉にはいつも魔法がかかってる。


パットの前で泣いたから青峰君の前では泣かないでいようって思った。


だけどきっとあたしは泣いちゃう。
キスが嫌だったって泣いちゃう


あたしはメイクでもパットに追いつきたいけど、優しくて強いパットって人間が心の底から大好き


メイクとしても人としてもあたしはこの人が目標。
誰よりも濃い大きな影として、アクターを輝かせ続けるこの人が、あたしは大好き
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