• テキストサイズ

最愛 【黒子のバスケ】

第23章 After the rain


『今は、仕事よ。あなたは、メイクアップアーティストのクロスミサキ』



グリグリと押し付けられるそれは、あたしのメイクブラシの柄
大我が贈ってくれた、あたしの名前が入ってるメイクブラシ

現場で使うことがなくてもいつもウエストバッグに入れてたそれを、いつのまにかパットが抜き取っていた。




『BOSS……』

『BOSSはあなた』



小さな声だけどはっきりと聞こえて現場の音が耳に戻ってきた。


網膜に焼き付いたキスの瞬間から時間が飛んだかのように、目に入った現状は全く違うものだった。



『カレンさん。構成を勝手に変更されるのは困ります』


怒ってる感じじゃないけど、構成を中野チーフが再度説明して、その通りにしてもらうようにお願いしてる。


メインカットは分からないけどCMの取り直しは確実だった。




『あら、どうして?本当にキスした方が流れとしても綺麗でしょ?』

『それは困ります。最後の筋書きは商品を手に取ったお客様に決めていただくために、どの構成も最後を曖昧にしています。我々は明確な意図をもってこの構成にしていますのでアドリブは必要ありません。構成通りでお願いします』


最初は確実に触れるシチュエーションだった。

だけど、青峰君を使いたいがために青峰君の条件を呑んで社内会議にかけた時、その曖昧さがいいのかもしれないってことで、大我と黄瀬君のCMの最後の方も曖昧な終わり方になっている。


消費者により自分を投影してもらうために


恋人と過ごすクリスマス

100人いれば100通りの理想や夢がある。

お出かけをやめてたくさんのキスをして過ごすのか

お出かけ前のキスをあえてさせないで、帰宅した後とびっきりの甘い時間にするのか

旦那さんがそのままキスをするのか

奥さんからキスをするのか



可能性は無限にある。



付き合いたての初々しい時期も、お互い以外のことは何も考えられない情熱的な時期も、成熟した深い愛にゆっくり浸る時期も


根底に愛があること以外、求めることは人それぞれに違う

だから最後の筋書きを決めるのは手に取ったその人





この恋愛を完成させるのはあたしたちじゃない



だからこそ曖昧である必要がある
/ 1719ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp