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最愛 【黒子のバスケ】

第23章 After the rain


「大丈夫か?」

「うん」


仕事に行く用意をするみさきの顔は、いつも仕事に行くような嬉しそうな顔はしてなかった。

でかい現場で自分がメイクの責任者ってこともあんだろうけど、それ以上に昨日のことも関係してる気がした。

プライベートと分けてるっつったって、別の人間になる訳じゃねぇんだから記憶はある訳で、嫌なことを綺麗さっぱり忘れられるって事じゃねぇ。


俺のキスマークを隠してた時とは全く違うみさきの雰囲気。



「なんか飲むか?」

「ううん。今は大丈夫」

「みさき……」

「ぎゅってして」


俺の言葉を遮って聞こえたみさきの声が少しだけ泣きそうで、少しでも安心させたくて強めに抱きしめるとみさきも強く抱きしめ返してくれた。


「昨日の二の舞にはしねぇから。目も離さねぇし、なんか言われたら俺が反論する」

「あたし、信じてる。…だから仕事を優先して。カレンさんとあたしの間に入らないで。刺激しないためにそうして」

「お前、何言ってんだよ。自分のせいでお前が傷つけられてんのに黙ってるなんてできる訳ねぇだろ⁉」


信じてくれてることはすげぇ嬉しいけど、みさきが傷付けられてるのを見て見ぬふりなんてできねぇ


「それをしてって言ってるの。彼女に仕事を放棄されたら困る。あたしはこの仕事をどうしても形にしたいの。あたしの案を採用してくれた中野チーフたちにもパットにも、仕事の恩は仕事で返したい。だからお願い。もう昨日みたいなことしない、何を言われても真に受けない。だからあの場所にいるときだけはあたしと付き合ってることは忘れて」


強い目とはっきりとした意思のある声だった

さっきまでの不安そうで泣きそうな声なんて気のせいだったんじゃねぇかってくらいに



俺はみさきの可愛いとこもすげぇ好きだけど、こうやって仕事にすべてを懸けてる姿を尊敬してた。


みさきがそう言うなら…
みさきはいつだって俺のバスケに関することを最優先して尊重してくれてる。

なら俺も、みさきが血反吐吐くほど努力してきたことを邪魔するわけにはいかねぇ。


「分かった…」

「でも……ここに戻ったら、またあたしを彼女に戻してね…」

「向こうでだって俺の女だ。事なかれ主義に徹してやるけど、どこにいてもみさきは俺の女だ」
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