第23章 After the rain
昨日はパットの車に乗って大泣きしてたから景色なんて楽しめなかったけど今は違う
時間があるからわざとちょっと遠回りして5thアベニューを一緒に歩いた
「すげ…」
「ねー。ホントキレイ…」
「入るか?」
「この格好で?」
あたしは昨日部屋で過ごすためのデニムとカットソーで部屋を飛び出した
とてもじゃないけどここのお店に入れる服装ではない
「買えば服装なんて別に問題じゃねぇだろ」
「買えない。あたしお財布ないしお財布あってもこれは無理‼」
「何言ってんだよ。俺が払うに決まってんだろ?」
「絶対入りません」
青峰君の冗談は冗談に聞こえない。
クリスマスにもらった時計の値段は知らないけど、自分では買えないって事だけは確か
「強情だな。もらっときゃいいだろ」
「もー!そんなおにぎりもらうみたいに気軽に言わないの」
「おにぎりってなんだよ」
「だって青峰君の言い方ってコンビニ行って
“お財布忘れちゃったー”
“あ、じゃああたし出すよー”
的な感じで言うんだもん」
確かに青峰君に取ったらそれほど高価なお買い物ではないのかもしれないけど、そもそもアクセサリーって特別な時にもらうから綺麗なものがもっと綺麗に見えるんだと思うし、身に着けるたびにその時を思い出して幸せな思い出を何度も感じられるんだって思うから、何でもない時に買ってもらって貰うことに慣れてしまうのはもったいない。
ダイアモンドが永遠に輝くのは、思い出が永遠に輝いてるからなんだってママが言ってた
だから、せっかく持つならより輝く思い出と一緒に持ちたい
「なんだそれ。けど分かった。ちゃんと理由がありゃいいんだな」
「適当なのはダメだよ」
「お前を泣かせちまったお詫び」
「却下」
「はぁ⁉なんでだよ」
「だってあれは…もう、恥ずかしいから……忘れて…」
恥ずかしくて顔をそらしたのに、腰に回された手にグッと引き寄せられて耳元に唇が寄せられた
「無理。お前の体……すげぇ綺麗だった」
背骨に響く甘くて低い声で囁かれた言葉に一気に顔が赤くなって、羞恥心が爆発しそうだった
「っっ…んー…ヤダっ‼‼忘れてっ‼‼‼」