第22章 大雨
どうして…
あんなひどいことを言ったのに
どうして怒らないの?
どうして面倒だって思わないの?
どうしてそんなに優しいの?
自分の問題なのに八つ当たりみたいなことをして、何の覚悟もないのにあんなことをして傷つけたのに。
「なんか嫌な夢でも見たか?」
「……」
あたしが自分の声にびっくりして起きるくらいなんだから、青峰君にだってあの大声は聞こえてたはずで、その後現実と夢がごっちゃになって泣きわめくあたしをなだめてくれた。
だけどあんな夢を見たなんて言ったら信用してないみたい。
あれはきっとあたしの心の底にあるものが具現化した
青峰君がそう思うんじゃないかって思いがあの夢をあたしに見させた
だからきっとあたしは、信じてるって言いながら本当は信じ切れていなかったんだ…
「吐き出せ。嫌なことも怖いことも不安なことも、全部吐き出せ。溜め込むな」
「聞いたら、きっといい気しない…」
「いい気がしてねぇのはみさきも同じだろ。あいつにごちゃごちゃ言われて、それでもお前は冷静を保ったんだから全部吐き出せ。何を聞いたって俺はお前を嫌いになんてなれやしねぇんだから全部話せ」
あたしは弱い
さっきの夢がリアルで怖くて聞いてほしいくせに、話したら信じてないって思われるのが怖くて話せなくて。
結局青峰君があたしを安心させてくれたら、不安を吐き出さずにはいられない
レストルームで言われたことも夢に見たこともすべて吐き出して
いつもあたしを落ち着かせてくれる青峰君のたくましい腕によりかかるとぎゅっと強く抱きしめてくれた。
「青峰君がそんなことをしないのも妊娠が嘘なのも分かってる。だけど、夢がリアルに見えて現実と区別がつかなくて…怖かった……青峰君にそう思われるのが…怖かった」
「俺はお前を女失格だと思ったことは一度もねぇ。見た目も中身も今のままでいい。無理に変わろうとしなくていい」
「ほんとに?」
「あぁ」
優しい言葉とあったかい腕の中が、さっき見た夢は本当にただの夢なんだって思わせてくれた。
「だからこれだけはマジで約束しろ」
「…ん?」
「無理して抱かれようとするな。それだけは絶対やめろ。本気で抱かれてぇって思ってくれたらその時そうなれればそれでいい」
「……はい…」