第22章 大雨
『ねぇちょっと。呑みすぎよ』
『呑ませて』
今はもう何も考えたくない
明日の仕事は夕方からなんだから、今は酔いつぶれて何も分からなくなるくらいになりたい。
カレンさんのことも、さっき言われたことも全部忘れたい
こういう時、お酒に弱くない自分の体質程恨めしいものはない。
それに、空腹ならまだしもさっき食事を摂ったばっかりで一向に酔いが回らない。
パットは何も聞かずにいてくれる。
呑みすぎって言いながらもあたしのグラスにお酒を入れてくれる。
ちびちびと舐めるように飲むパットとは違って、あたしは度数の高いお酒をどんどん流し込んだ。
『ほら、イチゴ好きでしょ』
好きだけど…
自分で食べるよりも、青峰君が食べさせてくれるイチゴのほうがおいしいってもう知ってる。
イチゴを見ると楽しかった時のことがよみがえって、また涙がボロボロ流れて止まらなくなった。
何の覚悟もないのにあんなことを言ったあたしを、青峰君はどう思ったんだろう。
嫌われたくないって体で繋ぎ止めようとしたあたしを青峰君はどう思ったんだろう。
呆れた?
面倒な女だって思った?
それに…
見ただけでガウンを戻されたってことは、がっかりしたんだよね
なんの凹凸もないこの体に何の魅力もないって…
もういい
『こんな飲み方して、お酒作った人が泣くじゃない』
『いいの』
本当はよくないけど今は人のことなんて気にしていられない
もう嫌だ…
信じるって決めたけどできないかもしれない
もちろんカレンさんの言ったことを鵜呑みにするわけじゃない。
だけどさっき青峰君があたしを抱かなかったのは、あたしとはそういうことする気になれなかったってことだから……
あたしは失格
彼女失格
女失格
こんなことになるなら、あのお誕生日の時一緒にお風呂に入ってそのまま抱かれてしまえばよかった。
けど…あの時も、お風呂で見られたら萎えさせたのかもしれない
結局あたしはどうしたって女失格ってことに変わりはない