第22章 大雨

「おい、勘違いすんなよ。みさきはお前があの女を無理矢理抱いたなんて思ってねぇからな」

「は？じゃあなんであんな試すみてぇなことして、一緒にいたくねぇなんて言うんだよ」


青峰も若干ズレてんな…
本気でそんなことしたと思ってんなら同じ部屋になんて帰ってこねぇよ。

バカだな


「みさきは、自分のせいでお前を我慢させてるって思ってるし、それに対して罪悪感もあんの。しかもあの事があった時、クソ男どもに女失格だって言われたことをずっと気にしてる。だからそういうのがいろいろ重なって、冷静じゃなくなっちまったんだよ」

「罪悪感なんて持つ必要ねぇだろ…俺がそれでいいっつってんだから…」

「みさきはお前と違ってそう単純じゃねぇんだよ。付き合うのを躊躇したときも、そのことをみさきは気にしてた。自分のせいでお前を我慢させたり傷つけるって分かってるのに付き合えねぇって。みさきだって大人だぜ？付き合ってままごとするわけじゃねぇことぐらい分かってんだよ」


経験がねぇから何も知らねぇってわけじゃねぇ。
自分がそういうことが怖いってことで、青峰を我慢させたり傷つけたりするってことをすげぇ気にしてた。

青峰なら自分みたいな面倒な女よりも、もっといい相手がいっぱいいるって思ってる。

みさきはあの事があって以来とにかく自己肯定感が低い。

あたしなんて
あたしなんか


元々自信たっぷりって性格じゃねぇけど、あの事があってからは自分を卑下することがすげぇ増えた。

加害者側や周りが言った言葉を真に受けちまうほど自尊心も粉々になった

本当のことを話しても警察が信じなかったことで、自分の言葉には何の意味もねぇって思ってた


少しずつ良くなるとは思うけどやっぱり時間はかかる。


「だったら、抱いたらそれで解決したのかよ…」

「いや、本気で抱こうとしたらしたでパニックを起こしたと思うぜ。見るからに怖がってんなら抱いてほしいなんて本心じゃねぇだろうし。つーかさ、それが分かってたからお前は抱かなかったんだろ」

「どうすれば安心させてやれんだよ……」


安心してるから抱けなんて言ったんだよ。
怖がってはいたかもしれねぇけど、みさきはそれもでもお前を繋ぎ止めてぇって思ったんだよ。


ホントこいつら不器用だな…
まぁ俺も全然器用じゃねぇけど