第22章 大雨
食事会場から出た時からみさきに元気がねぇのは分かってた。
疲れもあっただろうし火神から聞いた話もあって、ニコニコなんてできねぇのも分かってた
けど、みさきは勘違いはしてねぇって聞いてたから、どっかほっとしてる自分もいた
部屋に戻って、今にも泣きそうな顔でバスルームに入ってったから、風呂を出たらちゃんと話を聞くつもりで、ベッドじゃなくカウチに呼ぶと目が真っ赤になってた。
風呂が長かった理由なんて聞くまでもねぇな…
俺のせいだ
泣かせねぇって言ったのに
強く抱きしめて謝ろうとした瞬間、みさきから信じられねぇ言葉が聞こえた
「お前…それ本気で言ってんのか」
「本気……だよ」
「本心で俺に抱かれてぇって思ってんのか?」
こんなこと聞かなくても分かる。
震えた声と歯がカチカチ鳴るほど震えた華奢な体
本心な訳がねぇ
なのに…
「本心だよ…」
抱ける訳ねぇだろ。
こんな怖がって震えて、風呂上りなのに手が信じられねぇほど冷たくなってて本心な訳がねぇ
けど、こうなった時のみさきは、言って分かるような物分かりのいい女じゃねぇってことはもう俺も知ってる
「分かった」
こんな状態で抱く気なんてサラサラねぇけど、分からせねぇといけねぇ時は俺だって分からせる。
みさきを抱き上げてベッドルームに入ると、体の震えは更に増して、背中までガタガタ震えてるのが腕に伝わった
ここまでやりゃ本心を言うと思ったのに、言わねぇからベッドに寝かせてガウンのヒモを解いた
夏用のルームウエアを着てると思ってた
なのに……
開いた先に見えたのは下着だった
こんなことしたくねぇ
できねぇ
こんな震えて怖がってる顔見てられねぇ
俺が限界だ…
ガウンを元に戻して抱きしめるとみさきの涙声が小さく響いた
「なんで……あたしじゃ……そんな気になれない?」
「そうじゃねぇ」
「なら抱いてよ…」
「…抱けねぇ」
「なんで?」
これで抱いたら無理矢理やってんのと変わんねぇ
そんなことできる訳ねぇだろ…
泣いてるみさきにどうしたら誤解なく、トラウマを刺激せず伝えられるか分からなくて、答えられねぇでいる俺を思いっきり押して、みさきが俺を引きはがした
「もういいっ‼‼離してっ‼‼」