第22章 大雨
青峰君とホテルの部屋に戻ると、さっき言われたことが一気に甦った
カレンさんを刺激しないために食事会では必要以上に話さないって決めてたから、やっと二人になれて落ち着いたのかもしれない
青峰君に抱きしめて欲しくて、でも抱きしめられたら泣いてしまいそうで一緒にいるのが辛かった
「お風呂、先入っていい?」
「あぁ。火神に聞いた。ごめんな」
「気にしてない」
あたしはきっとうまく笑えてない
だけどあたしが気にしてるのは本当にそれじゃなかった
髪を解いてバスタブにお湯を張りながらシャワーブースで体を洗うと、ぼたぼたと涙が流れて止まらなくなった。
シャワーが涙を隠してくれるせいなのか
シャワーの音が嗚咽をかき消してくれるからなのか
久しぶりに苦痛から流す涙は止まらなかった。
女失格
あたしのトラウマを刺激するには十分すぎる言葉だった。
青峰君も本当は、先に進めないあたしにうんざりなのかもしれない
面倒な女だって自覚はある
子供じゃないのにいつまでも先に進めないあたしは女失格
女失格だから青峰君が他の人のところに行っても文句は言えない
だけど、それだけは嫌…
青峰君が他の人のところに行っちゃうのだけは、どうしても嫌
ちゃんと女の人として頑張るから
嫌いにならないで
ちゃんと満足させられるようになるから
他の人を好きにならないで
青峰君に女失格って思われたくない
せっかく好きになってもらったのに、嫌われたくない
いつも通りにバスローブを着て
いつも通りにスキンケアをして
いつも通りに髪を乾かして
いつも通りに髪をお手入れして
いつも通りに下着をつけて
いつもは着るルームウエアは着なかった
下着の上からそのままガウンを着てバスルームを出ると、青峰君がカウチに呼んでくれたから、竦みそうになる脚に必死で力を入れてカウチに座った。
用意してくれたペリエをカラカラの喉に流し込んでグラスをサイドテーブルに置くと、青峰君が強く抱きしめてくれて、あたしもその胸に抱き着いた。
嫌いにならないで…
「……抱いて…ください…」