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最愛 【黒子のバスケ】

第21章 bombshell


全員が椅子に座って、初めて見る中年の男性があたしに紙を渡してくれた。


「当院で事務長をしております、安田と申します。今回の件で黒須さんから賠償請求は一切されないお考えでいると医院長から伺いまして、本当にそれでよろしいのか、最終確認をさせていただきたいと思っております」

「しません」

「本当によろしいですか?」

「必要ありません」

「それでは、こちらにご署名を頂戴できますでしょうか?」


それは、この件に関しては一切金銭要求をしないってことを約束する書類だった。

だから迷うことなくフルネームで署名を書き込んだ


「みさき、本当にいいのか?仕事を何件も断ったのだろう。見込んだ収入分だけでも…」

「いいの。自力で手にしたお金じゃないと意味ないから」

「事務長、悪いが作り直してくれ。文言はそれで構わない。黒須さんが傷を消したいと望んだ時、それがいつであろうと費用は当院が持つということを加えて、すぐに作り直してくれ」


あたしは本当に人に恵まれた。

病院だって慈善事業ではない。
賠償請求されないとなれば、それはそれでよかったと思って当然なのに



医院長に言われてすぐに部屋を出た事務長が書面を作り直して、あたしがサインをした書類はその場でシュレッダー処理された。



傷は確かにはっきりと残ってるし、まだ色も赤くて凹凸もある。

だけどこれはあたしが戦った証だから

本当にあいつに負けなかったと自分で思えるまでは消さない。
一生消せないかもしれない
だけど中途半端な状態では絶対に消さない
中途半端になかったことにはしない


事務長が作り直してくれた書類にサインをして渡すと、玲子先生が花束をくれた。


「25本」

「え?」

「25本のバラの意味は“あなたの幸せを祈っています”なのよ」


青いバラの花言葉…
「夢かなう」「奇跡」「神の祝福」



こんな素敵な組み合わせ…

嬉しくて涙が込み上げてきた



「全快おめでとう」

「…ありがとうございます」


きっとあたしはまだまだ玲子先生にお世話になる。

だけど体はもう完全に元気だから

心だって、弱いところもあるけど十分元気って言える


あたしが絶対に元気にしてあげるからね


8年前玲子先生が言ってくれたこの言葉が現実になった


「元気にしてくれてありがとうございました」



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