第20章 28
予定時間を過ぎても青峰君から連絡がないのは、現場が長びいてるんだって思ってたし特に珍しいことでもないから気にしてなくて、何の気なしに聞いたのに…
青峰君が話してくれたことを聞く限りわざとNGを出してたみたいだった。
確かにそういう人はいる。
同じような現場に立ち会ったこともあるけど、あれは全スタッフを巻き込むことになる。
「どうやって断ったの?」
「行くようなふりしてハイヤー呼んで、ライアンのホテルに部屋を取らせて部屋まで送らせてから、あっちの事務所に連絡させて、今後二度と共演しねぇって伝えた。多分向こうの事務所の人間が迎えに行くだろ」
共演のモデルさんはお仕事はしたことないけど名前も顔も知ってる。
スタイル抜群だし、何よりも私にはない大きめのバストを持ってるから、言い寄られたって聞いたときはちょっとチクリとした。
嫉妬…だと思う。
でもきっぱりと断ってくれて、それを隠さないでいてくれたことは嬉しかった。
青峰君がすごくモテるなんて最初から分かってたんだから…
それでも大好きで信じるって決めたんだから
青峰君があたしを愛してるって言ってくれてるのをあたしは信じてる。
「あの…ありがとう」
「なんでだよ」
「だって……帰ってきてくれたから、嬉しかった」
疑ってる訳じゃない
相手はあたしよりも明らかに綺麗な人なのに、あたしを選んでくれたことが嬉しかった
「当たり前だろ。俺はお前しか好きじゃねぇんだから」
「あたしも、青峰君だけが好き」
恥ずかしいのにどうしても心の声が出てしまう。
大好きで大好きであたしにいろんなことを教えてくれた大事な人
「なぁ、俺明日仕事行かなくていいだろ?」
「それは、ダメだよ…」
「しょーがねぇなぁ。お前が昼作ってくれるし、行くか」
「うん!頑張ってね」
本当はあたしも一緒に過ごしたい。
だけど明日を逃したらもうタイミングがないから、お仕事に行ってくれないと困っちゃうの。
それにハンバーガーも研究したからその成果をちょっと味見して欲しい
おしゃべりしながら一緒にご飯を食べて、お片づけを手伝ってもらって、お湯が溜まるまでの時間に一緒にバスソルトを選ぶ。
もうすぐアメリカに戻っちゃうから今は一秒でも長く一緒にいたい