第19章 甘い時間
さすがにベッドでのメイクは猛烈に緊張した。
今までもこの雑誌のメイクは何度もやっていて、いろんなアクターを同じようにメイクしたけど、ただの被写体で何も感じなかったのに、青峰君となるとそうもいかなかった
今は仕事って必死に言い聞かせながらやってると、ライアンが青峰君と普通に会話してくれてたお陰で何とか平静を保てた。
ライアン、本当にありがとう
あたしまだまだ半人前です
一緒に寝たりキスをしたりはしてるけど、青峰君が下着一枚なんて今までに一度もなかった。
この間やったシミュレーションだってデニムは履いててもらってたから、下着一枚っていうのはすっごい恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。
いつもこの体があたしをぎゅってしてくれてるんだって思ったら眩暈がして、ライアンがいなかったらあたしは多分鼻血を出すか倒れてるかどっちかだった。
それにしても…
青峰君は全然普通だった
触られても平気なんだ…
なんかあたしだけすっごくドキドキしてて子供みたい
あーもう‼‼
ダメダメ‼‼‼今は仕事‼‼‼
自分だけが余裕がないことを考えてしまって、仕事に集中できてない自分に喝を入れなおして、撮影の事だけを考えようと意識を集中させた。
「大輝‼目線こっち‼……いいね‼‼すげぇかっこいい‼‼」
「次、仰向けで腕枕する感じに左腕伸ばして。そう‼‼彼女乗せてる感じで…今のいい表情‼‼」
撮影の時カメラマンは結構喋る。
指示を出しながらもアクターの気分を乗らせるために“かっこいい”とか“かわいい”とか“色っぽい”とかってコンセプトに合わせた誉め言葉を次々と繰り出す。
「好きな子いるでしょ⁉その子といて最高に幸せなとこ想像して…目線こっち‼‼」
すごくドキドキする。
優しい顔も、少しだるそうにする顔も、目を閉じた顔も、すべてがかっこいい。
そう思ってるのはきっとあたしだけじゃない
女性スタッフの声が嫌でも耳に入る
“ちょーかっこいい”
“遊びでも全然いい”
“もう今日の現場入れたの運命感じる‼”
“イケメンすぎ”
“一回でいいから抱かれたい”
すっごく小さい声だから撮影ブースの青峰君には聞こえてないけど…
やっぱり青峰君をかっこいいと思うのはあたしだけじゃないんだって思い知らされた