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最愛 【黒子のバスケ】

第19章 甘い時間


メイクを始めてからのみさきは、クライアントとメイクって立場を絶対に崩さねぇ。


目がうるうるしてたり身長差で上目遣いになったりすんのは変わらねぇからすっげぇ可愛いんだけど、邪魔しちゃいけねぇなって思わされるほど、みさきは真剣そのものだった。


そして無駄なことは一切喋らねぇ。

去年はバカみてぇにぺちゃくちゃ喋る女で、マジでうんざりだったし顔にもすっげぇ色々塗ったくられて、顔がべちゃべちゃするような気すらしてた。


まぁ実際はべちゃべちゃなんてしてねぇけど、不快感がすげぇあった。

けど今年はその不快感もほぼ感じねぇ


さすがに塗られてんのは分かるから、全く何にも感じねぇことはねぇけど、今までみてぇな顔を擦りまくりたくなる感覚はなかった


静かでうまい


黄瀬の言った通りだった。


「長く立たせてしまってすみません」

「いや、大丈夫だ」


手を止めることなく手元だけを見て、それでも気を使いながら進めてくれて、いつもはすげぇ嫌なこの時間が今は嫌じゃなかった。

やってくれてんのがみさきだってのが嫌じゃねぇ一番の理由だけど。


「ここでするのはここまでになります。触ると崩れてしまうのなるべく触らないでいただきたいのですが、かゆかったりしたときは掻いてしまっても大丈夫ですので教えて下さい」

「分かった」


俺の周りを何度か歩いて、近づいたり離れたりしながら俺を観察して、最後に少し笑ってから、俺が座れるように背もたれのねぇ椅子を用意してくれて、今まで使ってたメイク道具を片付け始めた。




片付けるときも道具を大事にしてんのが見てるだけで伝わってくる。


1本1本ブラシをティッシュで拭きながらきちんとケースにしまって、他の小さめのバッグにまとめて、化粧品の入れ物も外側を全部拭いて綺麗にしてから、デカいバッグの中のメイクを入れる専用のボックスにしまってる。

みさきは仕事から帰ると必ずブラシの手入れをしてる。

こうやって使ったブラシと使ってねぇブラシを分けたり、化粧品を綺麗にしてんだな…


メイクって仕事に対してすげぇ真摯だし、それを支える道具たちをすげぇ大事にしてて愛情を感じる。


“道具を粗末に扱う人は一流にはなれない”ってどっかの野球選手が言ってたけど、みさき程道具を大事にしてるメイクは見たことがねぇ


みさきは間違いなく超一流だ
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