第7章 近づく距離
気流の関係もあるのかそれほど遅れずに無事に空港に着いて、自分の荷物が出てくるのを待つ間に青峰さんに連絡を入れた
(着きました)
(もういる)
なるべく待たせたくなくて自分の荷物を今か今かと待ってるのにちっとも出てこない…
1個2個と消えていくキャリー
…嫌な予感
全ての荷物がコンベアから無くなったのにあたしのキャリーがない
最悪…
なんで今日に限ってこうなるのか…
ロストバゲージの手続きをしてから入国ゲートをくぐると、壁にもたれてスマホを見てる青峰さんがいた
やばい
めちゃくちゃ待たせちゃった
走って近づくと顔を上げてあたしに気づいてくれた
「お疲れ」
「ごめんなさい。お待たせしちゃいましたよね…」
「いや、大丈夫だ。つーか……荷物、少なくねぇ?」
「ロスバゲです…」
タキシードも入ってるのに
何度も飛行機に乗ってるけどロスバゲなんて初めて
「仕事大丈夫なのか?」
「こういう事を想定してない訳じゃないので仕事道具は手元に置いてあって無事です」
キャリーに仕事道具は絶対入れない。
メイク道具はデリケートだしあたしのパートナーだから
「意外にしっかりしてんのな。ほら荷物貸せ」
荷物を持たせるなんて申し訳なくて断ろうと思ったけど、青峰さんがあたしの返事を待つことなく雑誌の入ってる大きめのバッグを持ってくれた。
メイク道具とサングラスはさすがに自分で持つけど、待たせた上に荷物まで持ってもらうなんて…
「とりあえずホテルで荷物置いて出掛けよーぜ。服も用意しなきゃマズいだろ?」
「え…予定とか大丈夫ですか?」
せっかくNYに来たならCLにないお店とか行きたいだろうし迎えに来てもらって買い物にも付き合わせるなんて申し訳なさすぎる
「今日は予定ねぇから。ホテルどこだ?」
「え…あのッ…タクシーこっちです」
CLからなら絶対飛行機で着てるはずだからタクシーで移動すると思ってたのに青峰さんが駐車場に向かうから思わず引き止めた
「車だ」
わざわざレンタカー借りてくれたの⁉
迎えに来させて待たせて荷物持たせて、レンタカーまで借りさせた挙句タキシードはありませんって…なんか申し訳ない
ごめんなさい…
せめて巨乳なら目の保養もできたのに
貧乳でごめんなさい