第19章 甘い時間
「無理にとは言わねぇし嫌なら無理しなくていい。けどお前がいいって思ってくれんなら俺がやる」
「…嫌じゃ…ないの…」
嫌なんじゃない。
緊張しちゃうの
こんな風にされることって今までなかったから…
「怖いことは絶対ぇしねぇし背中以外も触らねぇ」
青峰君があたしに怖いことしないなんてもう分かってる。
でも自信がない
ガリガリで色気が無くてがっかりされるんじゃないかって不安になる。
「あたし、ガリガリだから…」
「ん?」
「全然柔らかくないから…」
「そんな事ねぇよ。細くてもちゃんと柔らけぇしすげぇ綺麗だ。お前がコンプレックスだっていう身長も華奢な体も俺はすげぇ好き」
薄暗くて好きな香りがして、大好きな人に抱きしめられてこんな風に好きだって言ってもらえて、もっと触れてほしいと思った
「背中…お願いします」
「あぁ」
青峰君がボディーバターのケースを手に取って、ちゃんと手のひらで温めてくれたのか冷たくないクリームが背中に伸ばされる。
大きな手が優しく背中を撫でてしっとりした感触が広がっていく…
気持ちいい…
あの時みたいな、強引で振りほどけなくて、押さえつけられる恐怖は少しも感じなかった
心の傷が癒されていくのを感じる。
青峰君の優しさで心も体もとかされていくのをはっきりと感じる
胸の前で組んでいた腕を少し緩めると二の腕にも綺麗に塗って腰までむらなく優しく塗ってくれた。
「どっか塗れてねぇとこあるか?」
「ううん。ないです。ありがとう」
恥ずかしくて顔は見れなかったけどお礼を言うと崩していたガウンを直してくれてまたぎゅっと抱きしめてくれた。
ほんとにこういうところが紳士だって思う。
「青峰君もする?」
「やってくれんの?」
「うん」
やってもらうのはすごく気持ちがよかったからあたしもお返しがしたかった。
Tシャツを脱いでもらってムスク系の香りが少しだけついたジェルクリームを少し手のひらで温めて肩をほぐしながら背中に塗っていく。
「お前の手、すげぇ気持ちいい」
「あたしも…すごく気持ちよかった」
触ると分かる
綺麗に鍛えられていて左右で完璧にバランスがとられている。
左でも右でも踏み切れて、どっちの手でもシュートを決められる体は、努力が作り上げたもの以外の何物でもなかった