第18章 劣等感
少し低めの声で言われていつもより少しだけ鋭い視線があたしの目を捉えた。
「俺はお前にすげぇ色々してもらってる。飯作ってくれんのも、仕事で忙しい合間に連絡くれんのも、試合見ててくれんのも、お前が俺を思って選んでくれるプレゼントも、お前が仕事であっち行ったとき時間作って会ってくれんのも全部すげぇ嬉しいし感謝してる。俺にとってお前の存在はバスケを頑張る意味になってる。お前が応援してくれてるって感じてるから勝ちてぇし今より上に行きてぇ。釣り合ってないなんて感じる必要ねぇ。さっきも言ったけど俺はお前に選んでもらいてぇし、お前を選んだのは俺自身だってことを忘れるな。俺はお前を愛してるしお前も俺をちゃんと好きだと思ってくれてんなら気持ちは対等だ」
気持ちは対等…
嬉しかった。
どうしようもなく感じる劣等感がその言葉で浄化されていく
あたしが青峰君にできることは限りがある。
だけど青峰君を好きな気持ちはきっと誰よりも強い。
愛してるってことがよく分からなくてもあたしはこれ以上に幸せを感じることを知らない。
だからきっとこれが一人の人を愛してるって事なんだと思う。
ちゃんと自分で理解できたらいつか青峰君に伝えたい。
もっと誇れる自分になったらあたしも青峰君を愛してるってちゃんと目を見てそう言いたい。
「朝から困らせてごめんなさい。車、使わせてください」
自分の劣等感を勝手にぶつけたくせに青峰君に優しくされるとコロッと考えを変えるめんどくさいあたし。
自分がこれほど面倒な女だと思わなかった。
27歳なのにとてつもなく子供っぽい。
もうほんとにごめんなさいしか出てこない。
心の中でも謝って青峰君を見ると優しい目をしてて、またぎゅって抱きしめてくれた。
「いつでも使え。今日は取材だけだから時間もかからねぇし帰りは多分迎えに行かれるから終わったらちゃんと連絡入れろよ」
「うん。よろしくお願いします」
もう反論は何もなかった。