第18章 劣等感
ハンナとの関係を隠すつもりがないっていうのは別に二人が決めることだしハンナが良ければそれで構わない。
だけど、今はまだジェシカのことが片付いてない。
パパたちからの要請で地元警察も監視はしてるらしいけど、わざわざリスクを冒すなんて馬鹿げてる。
普段は慎重な大我でもハンナが好きすぎてちょっとおかしくなってる。
『冷静になって。パパラッチと結託して写真を流すプレスがいることは大我だって分かってるでしょ。レセプションは公式の仕事なの。そこで撮られた写真まで完全に掌握できるの⁉ジェシカのことが片付くまであからさまなことは避けて。ハンナを危険にさらさないで』
大我に怒るのは久しぶりだった。
ハンナをどれだけ好きになってもいいけど、自分が有名であることでハンナを気に入らない人もいるってことを分かってほしい。
現にジェシカはそうなんだから。
『…そうだな…悪りぃ』
『謝る相手はあたしじゃない』
大我も自分に言い寄る人が多いことはそれなりに自覚はあると思う。
だからハンナを安心させたいっていう気持ちもあってそう言ったんだって分かってる。
だけど今はそれよりも、安全を優先しなきゃいけない。
『ハンナ…ごめん』
『いいの。タイガが隠さないって言ってくれたの嬉しかった』
きっとハンナも不安だったんだと思う。
自分を恥ずかしいって思うんじゃないかってことを何度も言ってたから、大我が隠したがればきっとハンナはそっちの意味に捉えてたかもしれない。
だからジェシカのことさえなければキスマークがあっても別にいいってあたしも思ってた。
大我がハンナから離れるのを待って、さっきから持ったままのコンシーラーでくっきりつけられたキスマークをしっかり隠す。
『できるだけ触らないでね。もし途中で確認して見えそうになってたり間違って触っちゃったらこれ使って隠して』
小さなバックにも入るスティックタイプのコンシーラーを準備されたバッグに入れてからリップを仕上げる。
ハンナの傷の位置は顔の半分より下。
目元に目線が行くようにそっちを華やかにしてるからリップは少しだけ控えめに。
でもイブニングパーティーだから、ヌーディー過ぎずきちんと色味のあるコーラルオレンジ
ほんの少しだけオーバーに取ったリップラインに重ねるように色をのせて最後は少しだけグロスを重ねた