第5章 色褪せない想い
「俺にもしろよ」
本気半分、冗談半分。
火神が当たり前のように黒須にハグしたのがすげぇムカついて、そのまま俺たちを見送ろうとした黒須に言うと、びっくりしたような顔をした後に、少し下唇を噛んで手が広げられた。
断られると思ってた。
すげーかわいい
堪んねぇ
ハグするには離れすぎてた距離を埋めて、背中と頭を強く引き寄せると、細いから体熱が伝わってきて夏なのにその体温がすげー心地いい。
「タキシード頼むな」
「はい。……お持ちします」
「待ってる」
離したくねぇけど、帰んなきゃなんねぇし……
もう一度少しだけ強くハグをして黒須を離すと、黒須の腕も離されて少し距離が空くと、空港内の空気に黒須の体温が散って、今まで感じた事のねぇ名残惜しさを感じた。
「行くぞ」
「あぁ」
「あ!またね!!」
「「またな」」
火神の声に黒須が顔を上げて、ちょっと笑って手を振ってくれた。
すげー振り返りたかったけど、振り返ったら戻りたくなっちまう。
火神が何度か振り返って手を振るのを羨ましく思いながら、搭乗専用の通路を歩いて機内に乗り込んだ。
マジで、すげー好き