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最愛 【黒子のバスケ】

第18章 劣等感


子供を育てるってビジョンが明確にある訳じゃない。

だけど子供は絶対にいらないって今言い切れるほど将来を判断できるわけじゃない。

欲しくなってから後悔しても遅い。

「それにね、内膜症は遺伝性があるんじゃないかって言う人もいるの。だからみさきには予防もしてほしい」


ママの話を聞いて検診を受けたくないなんて理由で最初にピルを断った自分が愚かに思えた。

それに生理の度に仕事を休んだり、貧血を起こしたりしてる訳にいかない。


長くて辛いママの独り言を全部聞き終えるころにはあたしの恐怖は少しだけ和らいでいた。


もし検査に問題がなければすぐにピルをもらうことを決めた。

ほかの誰でもなく自分自身の為に自分で決断した。







そしてついに検査の順番が回ってきて先生と対面することができた。


『英語は?』

『分かります』

あの時と同じ優しい喋り方と優しい声。

違うのはきちんと顔を見ることができてその目がすごく優しかったって事だった。


『初めまして。PTSDのことは聞いてるわ。大変な思いをしたわね…』

『いえ…もう何年も経ってますから…』

何年も経ってる
だけど忘れることも乗り越えることもできてはいない。

あたしよりつらい経験をしてても頑張って立ち直ってる人がいてもあたしはまだそれができていないことは分かってた。


『検査の椅子には乗らなくていいわ。個室が用意できてるからそこで支度をして待ってて頂戴。できたらナースコールをしてくれたら、お母様と看護師と行くわ』



あたしがピルを断ったことは玲子先生も知ってた。
だけどあたしのことをきちんと伝えておいてくれたことがすごくありがたくて助けられた。


あたしはあの内診台が怖い

脚が閉じられない上に太ももの傷に丁度脚をのせる部分が当たって何をされるのか分からない恐怖があのことを強制的に思い出させられるようで怖くて堪らない。



看護師さんに案内された部屋に入って服の上から検査着を着てショートパンツと下着を外してベッドに座った。


3回ゆっくり深呼吸をしてからナースコールを押して先生を呼んだ。
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