第18章 劣等感
LAでの生活も残り2日。
こっちで最後の検査とピルの相談をするためにママと一緒に病院にきた。
脳の検査も問題なくクリアして記憶も飛んでいる部分はもうない。
傷を形成の先生に診てもらうときは少し手が汗ばんだけど前回と同じ女医さんだったってこととママが近くにいてくれたことで問題なく診察を終えられた。
リハビリはもう始めていいしテープも剥がしていい。
冬場に冷えすぎたりすると傷が盛り上がることがあるからそれだけ気を付けるようにって事だった。
だからもう太ももは何も問題ない。
自分の努力次第できちんと元通りに歩けるし大好きなヒールだって履ける。
ヒールを履いてもきちんとした姿勢と歩き方を保てるようになったらパットが贈ってくれたあのヒールを履いてパットに報告をするの
だけど今目の前にあるもう一つの壁
婦人科
ピルの相談ということはあの検診を受けなくちゃいけない。
年に一度のがん検診だって怖くて嫌で玲子先生が付き添ってくれても毎回泣いてたし2年前は女性の先生がいなくて泣きすぎて過呼吸を起こして嘔吐までしてしまった
ピルを飲み始めれば日本ではそれが3か月に一回になる。
待っている今でさえ全身に汗をかいているのが自分でもわかるし緊張と恐怖で気分が悪い
検査のために朝食を抜くように言われていたお陰で吐かずにいられるけど今すぐ逃げ出したい
「みさき、ママがついてるから大丈夫よ。それに今日のドクターはみさきを取り上げてくれたおばあちゃん先生だからベテランよ」
あたしの意識が無くて声だけが聞こえてた時来てくれたおばあちゃんと同じくらいの年代だと思われる声の持ち主
あの時優しい喋り方と声に心が安らいだ。
だけど今は先生が誰でもすごく怖い
「うん…」
なにも喋れなくて気を逸らすことができないあたしの背中をママの手がゆっくりと撫でて落ち着かせようとしてくれる
「手術の前にママの手をお手入れしてくれるって言ってくれたけど、まだしてもらった覚えがないのはママの気のせい?」
「ううん…今日か明日するよ」
手術前にそう言ったことは覚えてたから帰国前には絶対にしようって思ってて少しだけ出かけた時にママによさそうなハンドクリームとパラフィンのパックはもう買ってあった
「今から言うのはママの独り言だから聞かなくてもいいわよ」