第5章 色褪せない想い
黄瀬君に言ったらなんか告げ口みたいで嫌だと思って、細かいことは言わなかったけど迷ってる場合じゃない
「あの日青峰さんのメイクに入ったミカさん。あの日あたしが朝一でA1に入ったのにミカさんのブラシが落ちてて届けたの」
「それはただの忘れ物じゃないんすか?」
「青峰さんと黄瀬君をA1に残して部屋を出た時、休憩エリアにいたミカさんが黄瀬君と接触するためにわざとブラシを置いたことを話してたのが聞こえたの。これだけじゃミカさんが写真を撮ったとは断言できないけどあたしの心当たりといえばこれくらい」
「もしかしたらみさきっちも呼ばれて話聞かれるかもしれないんスけど大丈夫?」
「それは大丈夫。社長さんに顔写真の件お礼しておいてね。あと美緒のことほんとによろしくね」
「りょーかい」
最後の声は、電話を受けたときよりは少しだけいつもの黄瀬君の声に戻っていた
なんか疲れた…
「おい、大丈夫か?」
「週刊誌に載るらしい」
「おまえと黄瀬がか?」
「うん」
「似合わねー‼お前と黄瀬って……つーか、それ信じるやついんの?」
大我が大笑いするから苦笑いだったこっちまで普通に笑えてくる
確かにあたしと黄瀬君じゃ似合ってなさ過ぎて誰も信じないか。
「けど、顔載るのは避けてぇんじゃねぇの?」
「黄瀬君とこの社長さんが抗議してあたしの顔は黒塗りにしてくれることになってるからそれは大丈夫」
黄瀬君のところの社長さんは元俳優さんだからなのか所属俳優をとても大事にすることで有名。
プライベートは基本自由だけど自覚と責任をもって行動しろというのが口癖らしい
黄瀬君に一般人の彼女がいることは知っていて、あたしと黄瀬君に恋愛関係がないことは社長も分かっているから猛抗議をしてくれたみたい。
「そろそろ出れるか?有名人」
明らかにあたしをからかってる…
「もー!やめてよね。顔出ないから私は一般人のままなの!」
顔が出たってあたしはれっきとした一般人ですけどね!
からかわれながら駐車場に行って一緒に車に乗り込んだ
「青峰んちは大通りから入って右に曲がれって」
「うん。分かった」
車を出してルームミラーに写る後部座席を見ると、汚くないかとか臭くないかとか気になってしまう
ちゃんとお掃除はしたけど…
やっぱり気にはなる