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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


ハンナに鏡を渡して見てもらうと大きく目を見開いてその目に涙が溜まっていく。


『やっぱり…すごく上手…』


傷の部分にそっと手を触れながら何度も“ありがとう”って言ってくれた。


自分ですぐにうまくなることはできないけど何回も練習をすれば自分でだって綺麗にできるようになる。


メイクを詐欺だって言う人もいるけど、美しくなるのは人のためじゃなくて自分の為だっていいはず。
隠して明るく生きていけるならそれに周りが文句をつけることじゃないってあたしは思う。

見えるところに傷のある辛さはその人にしか分からない。


ポイントのメイクも完成させて髪を少し寄せて首の傷がなるべく隠れるように整えるとハンナが鏡を見て笑ってくれた。


あたしはこういう顔が見たいからメイクをしてる。
やっぱりメイクの可能性は無限大なんだって思えた。



メイクをしたハンナと一緒にリビングに降りると大我がソファでママと話しながらおやつを食べてて、こっちに振り返ると一瞬びっくりした顔をしたけどすぐに二カッと笑った。


『すげー可愛くなってんじゃん!』

大我の言葉は確実にハンナに向けられてて顔を上げたハンナはすごく照れてて可愛かった。


『ほんとすごく似合ってるわ』

『あたしメイク上手でしょ?(笑)』

『なーに言ってんのよ。ハンナの素材あってこそよ。みさきはママと今夜のお食事の用意をするんだからキッチンでエビ剥いて頂戴。椅子あるから』


きっとママは大我とハンナを二人にした方がいいって気づいてる。

そしてあたしもそうした方がいいと思ってる。

『プールサイド出るなら何か飲み物用意するよ』

『外出るか?』

『うん…そうさせてもらおっかな』


いくら広いリビングとは言え大我のシカゴのお家みたいに仕切はなくてきっとハンナが話しにくいんじゃないかって思った。
プールサイドなら人目も気にしなくていいし日陰もあるし今日はそんなに暑くないからカバナでゆっくり話せる大我との時間を作ってあげたかった。


冷たい紅茶をデキャンタに入れてグラスを2つ渡して外に出た二人を見てたら無性に青峰君に会いたくなった。



「大輝君に会いたいんでしょ?」

「そんなことないもん」

「ほんと可愛くないわね。素直に言いなさいよ」

「てゆーか何でママが名前呼ぶの!?あたしが好きな人なのに‼」
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