第16章 愛しい体温
3人で実家に戻るとママが仕事から帰っててあたしたちを出迎えてくれた。
『初めまして。みさきの母の泉よ』
『初めまして。ハンナです』
『マイアミで娘がお世話になったって聞いてるわ。本当にありがとう。うちはいつまでいてもらってもいいんだからね』
ママにはハンナのことをメッセージで伝えて家に来ることとパパに脅迫やコテを押し付けられたことをなんとか捜査できるように取り計らって欲しいことを伝えてもらった。
週末に戻るパパが直接手紙を見て話を聞いてくれるってことになった
ハンナをゲストルームに案内するために一段ずつゆっくり階段を上るとハンナが手を貸してくれてこれじゃどっちがお客様なのか分からない。
『今日一緒に寝よ!』
『うん!』
状況はいいものではないのかもしれないけどハンナといると記憶のことは気にならなかったしさつきたちとするお泊り会みたいで楽しかった。
それにハンナも病院で会った時より少しだけ笑ってくれるようになった。
傷はもう完治してるけど痕が残っていてコテが長く押し付けられたのかケロイドになってしまっている。
いろんな治療はあるだろうけど一瞬で何もなかった綺麗な肌に戻すってことは不可能だった。
でもあたし、こういう傷のカバーメイクはかなり得意かも…
メディカルメイクアップはBOSSがあたしに任せてくれた最初の仕事で、メイクを始めてから一番多くやってきた仕事でもある。
『メイクはどうしてるの?』
『これ使ってるんだけどうまく使いこなせなくて…すごく厚塗りしてるみたいになって、今はほとんどしてない』
ハンナが見せてくれたそれは確かにあざや傷を隠すために優秀な商品ではあったけど、使いこなすのは結構難しいしハンナの肌には少し色が暗い。
『あたしにちょっとやらせてもらえる?』
『あたしもみさきにメイク教わりたかったの。教えてもらえる?』
『もちろん!』
ハンナの使ってるのとは違うけどあたしがメディカルメイクアップで使ってるファンデーションの色を合わせてベースのカラーを作っていく。
傷や凹凸はそれとカラーコンシーラーで隠すけど、綺麗な肌の部分は普通のコスメを使って自然な仕上がりになるように色を合わせた。
最後に凹凸を目立たなくする様にハイライトを足してベースを完成させた
『どうかな?』