第16章 愛しい体温
病院を出てハンナの自宅に寄って必要な荷物を一緒にまとめた。
一人で住むには広めの綺麗なアパートメントだった。
『ここセキュリティはどうなってるの?』
『それを重視して選んだから比較的しっかりしてるかな…住民以外が居住スペースに入るときは必ず身分確認を取ってくれるし』
『そう。でももうここには戻らないつもりでいてね』
住所を知ってるならいつここにこられてもおかしくない。
ジェシカに責任を取らせて尚且つハンナを安全に生活させてあげないと…
『パパには連絡してもいい?』
『もちろんよ。でもここは引き払わないで借りっぱなしにするの。ここに住んでるって思わせておかなきゃいつまでも付け回される。お金はかかるけど安全には変えられない』
それにこれはあたし一人ではどうしようもできない。
あたしが帰国した後も事が解決するまでちゃんとハンナを守ってくれる人がいないと
『大我には話せない?』
『…邪魔になりたくないのよ…ミサキの帰国が決まったらあたしももう一つ部屋を借りるわ…』
辛いことがあった時、寄り添ってくれる人がいるのといないのとでは精神的な負荷が全然違う。
あたしはあの時辛かったけど、たくさんの人があたしを支えてくれた。
だから今こうして立ち直ることができてる。
辛いとき周りに頼るのは悪いことじゃない。
『ハンナ、聞いて。大我はそんな風に思ったりしない。大我は自分の周りの人たちをすごく大事にしてる。ハンナのことも含めて。だから困ってる時は絶対助けてくれる。それに大我のお家はあたしの実家の隣だし、いつもだいたいうちにいるんだから別に大我の生活が変わったりはしない』
それに大我だってハンナをすっごく心配してる。
エレベーターに乗って先に病院を出たときの顔も、車に二人で戻った時の顔も、大我はすごくハンナを心配してた。
それにバスケ大好きな大我がバスケの遠征先からチョコを送るなんて大我だってハンナのことをいつも考えてたんじゃないかって思った。
どっちにしても大我がハンナを迷惑だなんて思うはずがない。
『こんなこと話して大我を困らせない?』
『困らせない。大我はハンナから連絡がない事を心配してたし今も心配してる。ハンナが話してくれたら大我もきっと力になってくれる』