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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


院内をゆっくり歩いて車に向かいながらハンナにどうしても言っておきたいことを切りだした。

『大我はね、ちゃんとその人を見てくれる人だよ。ハンナに傷があるからってそれをどうこう言ったり思ったりする人じゃない。だってあたしみたいに面倒な幼馴染をずっとお世話してくれてたんだもん。だから大我を好きだったって無理矢理過去にしないでほしいの』

大我への気持ちを無理矢理押さえ込んで過去にして欲しくない。
ハンナは何も悪くないんだから、ジェシカのせいで大我を諦める必要なんてない

大我の好きなタイプとか全然分からないけど、さっきの心配そうで悲しそうな大我の顔はハンナをどうでもいいと思ってる訳じゃないことくらい誰でもわかる。


『…好きよ。今だってタイガが好き。すごく好きよ…』

ポツリと小さく呟いて、複雑そうに悲しそうに微笑むハンナにこれ以上この話題は続けられなかったけど、大我を好きだって言ってくれたことがあたしにはすごく嬉しかった

『ねぇ、どうしてミサキは手術したの?』

空気を変えるように繰り出された質問に、詳細までは話す勇気が出ないものの、ハンナのことを聞いたのに自分だけ嘘で誤魔化すことは出来なくて、11年前に刺されてそこにガーゼが残ってしまったことで出来た肉芽腫を摘出した事を正直に話した



『刺した人は捕まったの?』

『捕まらなかった。今も普通に生活してるよ。奥さんと子供もいて、何事も無かったように……普通に生活してる』

話すだけで怒りが溢れそうで、どんなに取り繕っても声にも言葉にも憎悪は出てしまう。

あの時のヒーローインタビューはそれ程強烈で、あたしにはショックなものだった

サッカーは見ないことにしてるけど、ふと目に入ったスポーツニュースで山本の名前を聞くことはあった。
すぐにチャンネルを変えることにしてるし、できるだけスポーツニュースは見ないけど完全に避けることはできない。


『そんな…』

『もう時効なの…でもハンナは違う。だから絶対責任を取らせるの』


やったことの責任は絶対に取ってもらう。
あたしの力じゃなくてもあたしが橋渡しをすることでどうにかできるなら力になりたい
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