第16章 愛しい体温
「疲れたなら家の中で休めよ」
少し距離を取って、あたしの頭をぽんぽんって撫でて優しく笑ってくれた。
6月ももう終わるってことは知り合ってからもうすぐ1年ってことだよね…
青峰君は1年以内に彼女を作るって言ってたけど、あたしの実家で大我といるってことはまだ彼女はいないのかな…?
でもそんなこと聞いたらあたしが青峰君を好きだってバレちゃいそう
「疲れたんじゃないの。なんかさっきの感じ、どっかで見たことある気がして…はっきりと思いだせる訳じゃないんだけどね
なんとなく感じたことのある雰囲気で、デジャヴっぽい感じだったの。忘れちゃったことと関係があるなら思い出したくて」
知り合って1年弱のうちの4か月分の記憶はすごく大きな気がして、記憶を早く取り戻したいって気持ちは日に日に強くなってた。
もし青峰君が好きな人とうまくいったらあたしは諦めなきゃいけないから…
それも知りたかった。
「みさき…そんなに焦るな。まだ肋骨だって脚だって治さなきゃいけねぇだろ?」
それはそうだけど…
記憶がないってことを実感する度に寂しくなる。
スマホを変えたことは覚えてるのにスマホについてるリングを青峰君がくれたってことは覚えてなくて、かといって自分で買った記憶もない。
2月までに覚えてるだけでもたくさんのことをしてもらってるんだから、忘れてしまった4カ月だってきっといろんなことをしてもらってるはずで…
それは青峰君に限ったことじゃないけど、してもらったことを忘れてるってことが嫌だった。
「青峰の言う通りだ。焦ったって思いだせる訳じゃねぇだろ?普通に生活して思いだせるなら思いだせばいい。思いだせなくても知りてぇことがあるなら俺たちが話してやる。だから今は体を先に治せ。9月にパットと仕事だろ」
「はーい…」
納得はできないけど、確かに体が治らなきゃ仕事はできない。
シューズクローゼットに見慣れないシューズボックスがあって、サイズは間違いなくあたしのだったからママに聞いたら、それはパットが買ってくれたくれたものでリハビリが終わったら履いていいって言われてるって教えてくれた。
そして9月に一緒に仕事をすることを心から楽しみにしてるってこともメッセージをくれていた。