第16章 愛しい体温
side青峰
驚いた。
みさきが生まれた時の話を聞いて、親子だからってそこまで同じじゃなくていいだろって思った。
みさきの手術が終わった後ICUから離れなかった俺に「気持ちは痛い程分かる」って言ったのはそういう意味だったのか…
「聞いてもいいっすか?」
「あぁ。なんでも」
「みさきに記憶のことを聞かれた時、本当のことを言うべきなのか、みさきの思ってることに合わせるべきなのか分からねぇんす」
俺と付き合ってるって言うことで、みさきを追い込んだりしねぇか心配だった。
メンタルが体に及ぼす影響はデカい。
手術をした上に肋骨まで折れてるみさきに余計なことを考えてほしくなかった。
とにかく今は、みさきの体が治ることを最優先したかった。
4か月分の記憶がなくても仕事に支障がねぇなら、9月に決まってる仕事でBOSSとやれるって喜んでたみさきが仕事に復帰できるように、それだけを優先させたかった
「記憶が戻ったとき、記憶がなかった時に言ったり聞いたりしたことを忘れる訳じゃない。それに、俺は泉に俺を思い出してほしかった。俺と夫婦で、生まれた子供は俺と泉の子供なんだってことを何が何でも思い出してほしかった。だから俺は記憶のない泉に“俺は夫だ”って言ってたな。結婚式の写真を見せたりもした。いいんじゃないか?付き合ってるって言っても」
俺ははっきりした言葉で聞いた訳じゃなかったのに、核心を突いた答えが返ってきた。
やっぱり誤魔化せねぇな
なら、先に言っとくか…
「みさきの記憶が戻ろうが戻るまいが、みさきがまた俺を選んでくれてバスケで頂点を取れたら_______________」
「みさきがいいって言えば俺は文句ない。但し、大事にしてやってくれ。自分の命より大事な俺と泉のたった一人の娘なんだ」
「はい」
この約束はすぐ果たせることじゃねぇ。
けど、いつか必ず果たす