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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


side司


みさきの意識が戻って安心したのも束の間、みさきは過去4か月の記憶がなくて青峰君との関係性も4か月前に戻ってしまっている。


泉は俺の存在だけをすっかり忘れてしまっていたが、みさきは4か月の間に起きたこと全てを忘れていた

泉から、みさきが自分の過去全てを彼に話した上で付き合って、今回の手術に同行してもらうことを決めたと聞いたとき、みさきが彼を心底信頼しているんだということも彼がみさきを大切にしてくれていることも分かった


それに……
手術前から意識が戻るまでに彼が見せた姿は、みさきを心から愛してるのだと認めざるを得なかった


簡単に認めるつもりなど微塵もなかったが、これほど辛い思いをしてでもみさきを選んでくれた青峰君に“認めない”などと言えるほど鬼にはなれなかった



「青峰君…ちょっといいか?」

「はい」


経験者だから言ってやれることがあるのかもしれないと思った
きっと彼はみさきの記憶が戻ろうが戻るまいがみさきから離れようなどと思ってはいないのだろうが、心の重荷を少しでも軽くしてやりたかった



「今の君は、まるで27年前の自分のようだ」

意識が戻らなかった時間の長さはみさきの方がずっと長かった
俺が泉の意識が戻るまで生きた心地がしなかったように青峰君もそうだったんだろうということは容易に想像できた。



意味が分からないといった顔で俺を見る彼に構わず話を続けた


「みさきが生まれた時、泉も心停止を起こしたんだ。幸い1分以内での蘇生で障害も残らなかった。だが…数日後に目を覚ました泉に俺の記憶は一切なかった。まぁ2週間後に突然記憶が戻って思い出してもらえたけど…あれは辛かった。好きで結婚した女に“誰ですか?”とか言われてな。君に仕事は100%でこなせなんて偉そうに言ったけど、当時俺は仕事をやめようと思った」


「俺は生きててくれるだけでいいって思ってます。別に俺とのことを覚えてなくて、この先も思い出さなかったとしても俺はみさきを愛してます。もう一回、俺と付き合ってもいいと思ってもらえるように俺がみさきに相応しい人間になります」



“少なくともパパよりは彼を知ってる”


その通りだな…

上っ面しか見なかった俺と違ってみさきはこの男のことをちゃんと見ていた

NBA青峰じゃなく青峰大輝という一人の男として彼を見てた
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