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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


今の自分の状況を聞いてなんていうべきなのか全く分からなかった。


あたしの中では間違いなく2月なのに今は6月だと言われても…

『あたし…ミラノ行った?』

『行ったわ。あたしにもお土産をくれたし、真太郎にも、火神君にも、青峰君にもお土産があって、お仕事上手くいったってすごく嬉しそうに教えてくれたのよ』

玲子先生がそう言ってくれて、覚えてないことは嫌だけど、あたしはきちんと目標だったところに行くことができたんだって思って少しだけほっとした。




『何かほかに知りたいことはあるか?』

『ごめん…ちょっと混乱してて…何を聞いたらいいのか分からない』


聞きたいことや知りたいことはたくさんあるはずなのに、記憶が飛んでいるってこと自体がうまく認識できていない状態では、何を聞いていいのか全く分からなかった。



「焦らなくていいのだよ。思い出そうが思い出すまいがお前は何も変わらない。どんな時でも常に人事を尽くして、何事にも全力で取り組むお前が、黒須みさきであることに何の変りもないのだから」


いつもの真太郎だった。

お医者さんの真太郎は普段よりももっと堅くてあんまり笑うことはないけど、最後に言ってくれた言葉はお医者さんじゃなくて、お友達の真太郎の顔であたしもホッとした。



玲子先生と真太郎が部屋を出て行くと青峰君と大我も部屋を出て行った。


何が何だか分からなくて呆然と考えるあたしの横にパパが座って頭にポンって手を置いた


「大丈夫か?」

「うん…まぁ…多分。全然意味わかんないけど。あたしパパと喧嘩したままだった気がするんだけど…」

青峰君を好きなことをパパに反対されて空港に送ってもらう車の中で反発した。

2月に番号を変えた時に電話が来たけど、そこでもあたしはつんけんした態度で電話を切ったから仲直りはできてない気がしてた。

「いや、大我の家にお前たちが泊ってるとき電話で話してパパはちゃんと謝ったぞ」

「そうだったんだ…でもバラさないでよ」

あたしは、大我の家に行ったことすら覚えてない。

「ははは!そうだな」

なんでそんなに軽いの?

ばらされたら恥ずかしすぎる。


「絶対だからね!」

「分かってる。…みさき、よく頑張ったな」


目にたくさん涙を溜めたパパの大きな手が、あたしの頭を何度も何度も子供の時のように撫でてくれた。
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