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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


意識を完全に取り戻したみさきだったが、言葉の端々におかしな点があって、心停止の際に脳に酸素がいかなかったことで脳に何か所見があるのかと思われたがCTでもMRIでも大きな問題は見られない。



過度のストレスによる心因的な何かかとも思ったが、玲子が実施したテストで回答におかしな点はほとんどない


だが日付やここ最近の記憶がおかしい


今は6月にも関わらず、みさきは日付記入欄に2月と回答していて、日にちは空白になっている。

つまり今のみさきには過去4か月の記憶がすっぽり抜けてしまっている


手術をした理由が分からなかったことや執刀医やチームの看護師を見て知らないと答えたことも記憶がないのならば当然のことだ。


だが、脳に異常もなく心因性でもないとなると…
術後長く目覚めなかったことによる一時的な逆行性健忘の可能性が高い。


記憶が戻るとも戻らないとも言えない、はっきりしたことは何も言えない状態だった。




とにかくみさきの家族とみさきにこの事実を伝えなければならない。


主治医と相談して俺と玲子で説明に当たることが決まった。



みさきの部屋をノックするとみさきの返事が聞こえて、部屋を開けると何とも言えない空気が漂っていた。



オペ直後程重くはないが、意識が戻って完全に喜べると言った空気でもなく、みさき以外の全員がみさきの状況の説明を待っているようだった。

さっきはいなかった祖母もすでに到着していて、すぐにみさきの状況の説明を始めることになった。


『まず、身体的なことですが、脚の手術カ所については壊死や感染などは一切なく順調な経過ですので心配はありません。次に胸骨及び肋骨の状況ですが、左第3肋骨、左第4肋骨に骨折が認められますので骨が安定するまでは固定の上安静指示となりますので日常生活はできる限り安静にしていただきます。固定ベルトについては後程お母様に着用方法をお伝えしますのでシャワー以外の時間はそれをつけての生活となります』


ここまでは通常通りの説明で何も問題はなく、みさきもうなづきながら聞いていた。

「深呼吸は肋骨を大きく動かしてしまうから極力避けるのだよ」

「うん。分かりました」


4か月分の記憶のないみさきが俺に向けてくれる笑顔はオペ前と何も変わらない


みさきは自分に起きていることを受け入れることができるだろうか…
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