第16章 愛しい体温
話してるうちに寝ちまったのか思ったよりも深く寝てたらしく、泥の中にいるような感覚の俺の手の甲に少しだけみさきの指が触れた気がした
触れたのは一瞬だったけど、俺の意識を覚醒させるには十分な出来事だった
「みさき…?」
反応は…ない
やっぱり気のせいだったのか…?
「青峰っ‼それ押せ‼」
俺の呼びかけにみさきは反応を示さなかったけど、火神がいきなりでかい声を出したせいでソファでうたたねをしてたみさきの母親も飛び起きた
「今みさきの脚が動いたんだよ‼早く押せ‼」
火神の言葉にみさきの頭の上にあるボタンを押すと同時にみさきの母親が部屋を飛び出した。
俺は足が動いたとこは全く見えなかった。
けど指が手の甲に触れたことは気のせいじゃなかった
「みさき?」
みさきにもし声が聞こえてんなら、でかい声を出したら驚かせちまうと思って小さめの声で名前を呼んだ。
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細くなった指がピクリと反応して…
俺の手の甲に確かに触れた。
その直後、部屋に緑間と主治医である執刀医、看護師、みさきの両親が入ってきてみさきをあっという間に取り囲んだ
みさきの目にライトを当てたり脈を診たりしながら、みさきの手を握ったり手の甲を軽くつねったりしてみさきの反応を緑間が確かめてる。
「俺の声が聞こえていたら俺の手を握り返すのだよ」
緑間の声にみさきの指がピクピクと反応して、4本の指が緑間の手を握り返した
『こちらの声や言葉を認識しています』
緑間の言葉に執刀医がみさきの手を握ると、みさきがそれに反応するように手を握り返して瞼がピクリと動いた
そして少し唸るようなため息を吐き出して
ゆっくり瞼が開いた
「………」
開かれたでかい目がさらに見開かれて、何も言わずにみさきは俺たちの顔をびっくりしたように眺めてる
「みさき?分かる?」
「…マ…マ…」
一番に口を開いたのはみさきの母親でみさきは確かに反応した
今まで聞いた声の中で一番掠れてて、小せぇ声だった
それでも俺にとっては、一番聞きたかった声に他ならなかった