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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


side緑間

一通りの説明をして執刀医がみさきの様子を見るために席を外して俺たちだけが残った。


青峰は俺に謝ったが謝る必要などなかった。


血管と癒着していると分かった時点で血管が肉芽腫内へ異常浸潤していることを予測しておくべきだった。

執刀医はおそらくそれも予見していた。
だが血管の浸潤が思ったよりも深かった。

あの執刀医でなければもっと深く血管を傷つけみさきを死なせていたかもしれない。

鮮やかで慎重な剥離、血管や神経の処理、全てにおいて今回の手術に立ち会ったことは外科医として大きな財産になる

「お前が謝る必要などない。俺の予測が甘かった。すまない……」



「緑間、ありがとな」


説明の間一言もしゃべらなかった火神が開口一番俺にそう言ってくれた。


「みさきの生命力が強かったのだよ」


執刀医は俺を褒めてくれたが、患者の生命力や生きる意志がなければ心停止からの蘇生などできることではない。

俺はみさきが戻れるために少し力を貸しただけだ。


この手術において一番の功労者はみさき自身だ。







手術終了から2時間


手術室でバイタルを見ていたみさきがICUに移動できるようになったことを看護師が伝えに来てくれた。



全員で廊下に出ると手術室の扉が開いて真っ白な顔で紫の唇のみさきが出てきた。


繋がれたモニターに刻まれる小さな山はみさきが生きていることを証明している。



みさきに触れさせてやることはできないが手術室横のガラス張りのICUに入ったみさきの姿は窓越しに確認することができた。


「このまま安定していけばいいが…」

心停止後目を覚まさないケースは決して珍しくない。
だが俺はみさきを元気な状態で青峰に戻してやりたい。


青峰といるとき、恥ずかしそうに照れたりしながらも、心から幸せそうにするみさきをもっともっと見ていたい。


愛し愛される人生は幸せなのだと知ってほしい。



不安なことは考えだせばキリがないが、手術が成功した今、みさきの生命力に賭けるしかない。

何事にも常に人事を尽くすみさきは運命に選ばれてしかるべきだ。

黒須みさきは、誰よりも幸せであるべきなんだ
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