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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


『もう一度!220にチャージ』


絶対に諦めない。
可能性が0でない限り、諦めることは絶対にできない

『離れて‼』

ドンッ


『反応あり!』


4度目にみさきの体が跳ね上がった直後、モニターの警告音が鳴りやんで心拍を刻み始めた



みさきが戻ったことに執刀医自身も目を見開いたが、それは一瞬とも呼べないほど短い時間だった

『リドカイン1ショット』

『はい!』

『出血点は』

『確認できています!輸血ポンピング投与開始します』


『時間』

『心室細動から3分7秒です』

『血ガス診て』

『はい!』

『バイタル』

『血圧65の44心拍50』


決していい数字ではない。
しかし、確かにみさきは蘇生した。

『血圧68の46。上昇しています』

『時間がない。急ぐぞ』


執刀医の言葉で一気に処置が進められた。

出血は肉芽腫ができたことで変則的に成長した血管からだった。
大動脈と繋がっていたために大量の出血を引き起こした。


出血を止める処置をして残りの肉芽腫を慎重に切り離し、血管の異常がないかを確かめる。




『ガーゼオーマ全摘終了』

執刀医の言葉に続いて、ステンレストレーに医療用ホチキスの置かれる金属音が静かに手術室に響いた


『バイタル』

『出血量2890ml 血圧79の42 心拍数55 …サイナス』


サイナス…

この響きがどれだけ尊いものなのか医師として忘れてはならない。

『安定次第ECMOを離脱する。体温に注意して全身管理をしてくれ』

『はい』



まだ血圧は低いが大量の出血を起こした後としては悪くない。

『君のおかげで死なせずに済んだ』

『剥離技術、大変勉強になりました』

執刀医と握手をすると、執刀医がみさきの顔を少し見て口元がカーブを描いた


【お疲れさまでした】

『お疲れ様』



執刀医に続いて手術室を出て、大量の血液が付いた手術着を廃棄ボックスに入れた。

オペを見ていた父たちに報告を済ませ、全員で結果を伝えるため青峰たちの待つ部屋に入った。








「危険は回避するんじゃなかったのかよ‼‼」

おそらく心停止のモニター音を聞いたと思われる青峰が、一気に距離を詰めて俺に掴みかかってきた


赤く充血した目は今までに見たことがない程鋭く、俺の胸倉を掴む拳は力の逃げ場がなく震えていた
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