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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


ふわっとした感じがして目を開けると、あったかくてまぶしすぎるほど明るいところで、小さくて透明なガラスの温室みたいな所だった


ここ、どこ…?


窓から見える庭みたいなところにはたくさんお花が咲いてて、どこかから水が流れるような音が聞こえてくる


起き上がって窓を開けると、風がふわりとあたしの頬をなでて、その瞬間に場所が手術室に切り替わった



緑の手術着を着た人たちが慌ただしく動き回っていて、手術台に寝るあたしの胸を真太郎が必死に押してる



ねぇ…あたしここだよ


そう言ってもあたしの声は誰にも届いてない

寝てるあたしの胸に何かが押し当てられて、自分の体が跳ねたと同時に、またあったかくて真っ白なガラスの家に戻っていた



さっき寝てたあたしの右の太ももにはたくさん血がついてたけど、今そこは何ともなくて痛みもなければ傷すらもない




ここは天国?

あたしは死んじゃったの?


よく状況が理解できなくて、小さな部屋の真ん中に置かれたベッドに戻って座ってると、今まで誰もいなかった窓の外に、背が高くて髪の長い女の人が優しく笑ってこっちを見てる。


大我のママ…?

ってことはやっぱりあたし死んじゃったの?


大我のママに近寄ろうと部屋を出ようとすると、大我のママが突然大きな声であたしに叫んだ。






「出ないで‼‼」


あたし大我のママに会ったらお礼しなきゃって思ってて近くに行きたいのに…



「どうして?」


「やっぱり、泉に似てるわ…」


部屋から出ちゃだめならせめて近づきたくて、開いた窓に近寄ると、大我のママが写真のままの若い綺麗な手であたしの頬に触れた。



でも……その手に温度はなかった。


だけど恐怖はない。
大我のママが持ってる空気が優しくて心地よくて、このままここにいたかった


「あたしね、会えたらずっとお礼したかったの。大我があたしのこといっぱい助けてくれてね…」

「知ってるわ。みさきちゃんがあたしに“大我を産んでくれてありがとう”って言ってくれてたのいつも聞こえてた」

大我とお墓参りに行くといつも思ってたことだった


伝わっててよかった


「あたしの言うことをよく聞いて。もうすぐあそこの扉がノックされるわ。だけど絶対に開けちゃダメ。何を言われても絶対開けちゃいけないわ」


「どうして?」
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