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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


あたしを生む前に妊娠してたってことに驚いたけど、おばあちゃんの話は続いた


『泉も一時心停止状態になって本当に危なかった。意識がまだ戻らなくて助かるかも分からないとき、保育器のあなたを看護師が泉の部屋に連れてきてくれてね、その時あなたが小さく泣いたのよ。小さな小さな声でね、聞き逃してしまうほど小さな声だったけど、きっと泉にはそれが聞こえたのよね。意識を取り戻してくれたの。司も泣いてね…そのとき思ったのよ。この子はきっとあたしたち家族にとって一番の光で最も愛しい存在だって。だから“最愛の者”って意味を持つケイトリンって名前をどうしても入れてほしかったの。おばあちゃんのわがままよ』

最後はお茶目に笑ってそう言ってくれた。


ママは出産のときは大変だったんだからっていつも笑って言ってけど、そんな大事だったなんてこの歳まで全く知らなかった。


やっぱり名前が長くても全部残したのは正解だった。


こんな風に思って付けてくれた名前なら、どれだけ長くても今度からは略したりせずに全部書こうと決めた。


『あたしちゃんと名前の通りになれてる?』

『もちろんよ。生まれた時からずっと、あなたは、おばあちゃんにとっても司にとっても泉にとっても最愛の存在よ』


ママよりももっと乾燥してて、皴があって、おじいちゃんとの結婚指輪を外していないおばあちゃんの手があたしの両頬を優しく包んでくれた

『みんなあなたを愛してるわ』

『あたしも愛してる』

何となく気になって聞いたことだったけど、知ることができてよかった。

こんなに大切にされてたことを知れたのに、何も恩返しをしないうちに死ぬわけにはいかない。
あたしは絶対に死んだりしない。


『脚が治ったらNYに行こうね』

『あら、キティが連れてってくれるの?』

『うんそうだよ!何したいか考えておいて、あたしの目が覚めたら教えてね』

『そうするわ』



おばあちゃんがあたしのおでこにキスをくれて、おばあちゃんの体温が伝わってくる。


ママとパパ、大我とおばあちゃん。4人の優しい体温がずっとおでこにある気がした。


愛してるって言ってくれた唇から伝わった体温は、今まで感じたどの体温よりも特別なものだった。






小さなノックの音がしてさっきの看護師さんが戻ってきた。





『移動しましょうか』


『はい』
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