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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


『着替えが終わったら呼んで下さいね。綿貫先生からお着替えに時間がかかることは聞いていますから焦らずゆっくりでいいですからね』


この病院はLAでも屈指の巨大病院。
看護師が冷たいって聞いたこともあったから最初はすごく心配だったけど、玲子先生が気を配ってくれてるのかあたしの手術を担当するチームの人たちはみんな優しかった


何度も深呼吸をしてゆっくり着替えてからナースコールを押した


看護師と玲子先生とママが部屋に入って来てママがあたしのさっきまで着てた服を受け取ってくれた。



手術室に行く為のベッドに乗せられて点滴用の針が腕に入れられた。


腕には入院患者のするタグを止められて久しぶりに見るフルネームだった


看護師さんが席を外してママと二人になったから何となく聞きたくなって聞いてみた


「ねぇママ。何であたしの名前これにしたの?」


名前が長いことを面倒だと思ったこともあるけど今は結構気に入ってて、でもどうしてこの名前になったのかは聞いたことがなかった


「ママが妊娠してるのが分かったのは6月で…その時日本にいたんだけどね、その日たまたまパパが買ってきてくれたお花が綺麗に咲いたカサブランカだった。それを見て生まれてくる子は女の子だって何故か直感してね、美しく咲くって書いてみさきにしようと思ってたの。でもお腹が大きくなるうちに漢字を当て嵌めるより平仮名のほうが自由な人生を送れるんじゃないかって思うようになってパパと相談して平仮名にしたの」

そんな風にいろいろ考えてくれてたんだ…

あたしがお腹にいた時からあたしは家族に愛されてたんだって感じることができた。
死んでもいいなんてどんなことがあっても言うべきじゃなかった。


「ごめんね。死んでもいいなんて言って…本当は、そんなこと…」

「分かってるわ。ママも叩いてごめんね」


あの時初めて叩かれてあたしも頬が痛かったけど、きっとママの手も同じくらい痛くて、心はもっと痛かったんだって思ったら謝らなくちゃって…

自然とごめんねが言えた


「ううん。いいの」

優しく頬に触れるママの手はあったかくて少しだけ乾燥してる

きっとあたしとパパが快適に生活できたのは、ママのこの手が毎日毎日環境を整えてくれたからなんだって今になってやっと分かった。


「退院したらあたしがママの手をすべすべにしてあげる」
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