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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


お昼にあれだけ食べたのに、大我が小腹が減ったとか言うから軽く食べられるものを買って家に戻って二人で食べてから真太郎に連絡を入れると、あと少しで病院を出発して迎えに来てくれるってことだった。


休暇の時と同じようにガスを止めて、万が一のことがあった時マンションの解約がスムーズにできるように書類をすべてまとめた。


「ここに入れとくね」

「…あぁ」

大我は手術がうまくいかなかったときに備えてる行動をよく思ってないのか機嫌がちょっと悪い。

「あと、この間言った靴はこれのことね」

「あぁ」

嫌なことを頼んでる自覚はある。
でも大我しか頼めない。

でもこの靴を日本に置いて行くのはあたしなりの願掛けでもある。

ちゃんと手術を頑張って戻って来てこの靴を自分で履くっていう目標でもある。


BOSSにもらった靴もこの靴もあたしは必ず履く。



「大我、あたししぶといから」

「…分かってるよ…」

「あたし大丈夫だよ」


あたしだって怖いけどあたしはもっと生きていたい。
大我がいつか結婚する奥さんと、いつか生まれてくる子供に会いたい。
そして何よりも、あたしはもっと青峰君と一緒にいたい。


あの頃は死んでもいい理由を必死で探してたけど、今は生きて達成したい目標がいくつもある。

だからあたしは絶対にこの手術を乗り切る
あの出来事にあたしの人生を支配されたりしない



壁を乗り越えた先はいつだってもっといい景色が見れるってことをあたしはいろんな人に何度も何度も教えてもらってきた



目線を合わせてくれない大我にギュっとハグをするとぎゅっとハグを返してくれた。


青峰君とは違う、でも何度も何度もあたしを助けてくれたこの体温。


「絶対ぇ死ぬなよ」

「あたしも信じるから、大我もうまくいくって信じて」

「分かった」




やっと目線を合わせてくれた大我はいつも通りとはいかないし少し無理をしてるのがバレバレだけど笑ってくれた。





静かな部屋に真太郎からの着信が鳴り響いて大我とやる気のない子犬3匹を連れてマンションを出る。


「忘れもんねぇか?」

「うん」



背の高い大我がブレーカーを落とすと部屋が真っ暗になった。


「行こっか」

「あぁ」



これから始まるあたしの戦いは、きっとあたしを今よりも強くしてくれる




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