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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


「すみません。中山編集長とお約束させていただいてる黒須みさきです」


受付で名前を言うと、もう顔なじみのせいかにっこり笑ってすぐに応接へ案内してくれた。


「少々お待ちください」



挨拶をしたいって伝えて、本当に少しの時間でよかったのに中山編集長はすごくきっちりしてる人で応接でお茶まで出してくれた。

ここは大きな出版社じゃなくて、各チームどの話題を扱っても結果を残せばいいって社長の方針で、この中山編集長はあたしのメイクブックを日本に持ち込むって決めてくれた人だった。


「お待たせしてごめんなさいね」

「すみませんお忙しいところ」

おいしいお茶をいただいて当時のことを思い出してると、編集長が入って来て前と変わらないキリッとした顔で挨拶をしてくれた。


「忙しいのは黒須さんじゃない。もう雑誌であなたの名前見ない日ないもの」

「私が日本で仕事もらえるのは編集長のお陰ですから」


「何言ってるのよ。本出したってうまくなきゃ業界でクライアント取れないでしょ。実力よ」


多分年齢はママと変わらないくらいであたしより少し若い娘さんがいるらしい。
妊娠中にご主人を不慮の事故で亡くして未亡人になってしまったけど、娘さんがいるから頑張れるっていつも言っててすごく強い人だなって思って尊敬してる



少し話をして、仕事が再開できるようになったらメイクブックの2冊目を正式にオファーするからまた連絡してねって言ってくれた。



「1件当たりこんなかけてて大丈夫か?」

「今の人は特別。日本にあたしのメイクブック持ち込んでくれた人だから。後はみんな5分くらいで終わるから予定通り回れるよ」

「黄瀬んとこは?」

「黄瀬君とこは少し長いかも。ごめんね。運転して待ってるだけじゃ退屈だよね」


これじゃあまるであたしの運転手さんみたいになっちゃってる。
ちょっと運転して止まって待つのは、普段運動してる人にとっては退屈そう。


「そんなこと気にしなくていいから、治った後も仕事もらえるようにきっちり挨拶して来い」

「ありがと。お昼おごるから食べたい物言ってね」

「考えとく」


大我は気分で食べたいものがコロコロ変わるからお昼直前に聞くのが一番確実。






リストを見ながら道案内をして、回るべきクライアントを順調に回って午前中の分をすべて終えた。
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