第16章 愛しい体温
助手席の窓を開けて、青峰君と少し話をしてからバイバイしようと思ったらリビングのカーテンが動くのが見えてネロ君が顔を見せてる。
「あ、ネロ君だ」
ご主人様を見つけたからなのか、あたしの車の音を覚えていたから大我だと思ったのか分からないけど嬉しそうに尻尾を振ってる。
大好きなご主人様を借りちゃって本当にごめんね。
いつもセルジオがお世話になってる無添加のおやつ屋さんでおいしいおやつたくさん買ってくるからねって心の中で謝ってから大我に車を出してもらった。
「せっかくのお休みでネロ君だってきっと青峰君といたいはずなのにすっごい罪悪感…」
「お前の手術がなくたって青峰はLAで家決めたり、チームのトレーナーやドクターと会ったりしなきゃいけねぇんだからそんな気にしなくていいだろ。どっちにしてもバタつくっつって日本に連れて来たんだからよ。しかもネロは留守番慣れてるからそんなに心配すんな」
「そうだけどさ…」
「おい、挨拶回んのにその辛気臭い顔やめろ。深刻な病気だと思われるだろ?」
確かにそうかも…
手術をするとは言ってあるけど、理由や場所は少数の人にしか言ってない。
気にしてもどうしようもないことを気にして変に誤解されたらそれはそれで厄介なことになりそう。
「それもそうだね。ネロ君がLAに来たらうちのプールで遊ばせてあげていいからね」
うちの庭にあるほとんど使ってないプール
ママがプールのある家がいいとか言ってそうしたらしいけど、日焼けするとシミができるって言って最近ほったらかしてる
あたしもLAにいた頃は脚の傷を気にせずに使えるから家のプールでよく泳いだけど最近はほとんど使ってない
大我の実家はプールはないから大我はLAでプールに入りたい時はうちのプールに入ってるってママが言ってたから、どうせ使うならネロ君も水遊びがすきらしいしから一緒に遊んであげればきっと楽しいと思う
「青峰もネロがいるからプールのある家にするとか言ってたけど、お前んちのプールならデカいし外のジャグジーもあるしいいかもな」
ネロ君は一度飼い主だと思ってた人がいなくなっちゃったから青峰君と長い間会えないのが大丈夫なのか心配だった
「着いたぜ」
ネロ君のことを考えてたら、あっという間に取引先に到着して菓子折りの付箋を確かめてからそれを持って建物に入った