第15章 初恋
「お前、何でみさきをシカゴに連れてかなかった?」
「パットだよ。マジ切れされた。オカマのマジ切れはチビるぜ」
みさきがシカゴに行くことをパットに話した次の日パットに呼び出された。
『あんた、みさきをシカゴに連れて行ってどうするつもりよ』
これまで見た中で一番鋭い、刺すような目を向けられた。
『どうするって…別にどうもしねぇけどあいつを一人にはできねぇ』
あの事があってからみさきはずっと俺と暮らしてた。
おばさんがLAの家に戻ってからも、腫れ物に触るようなおばさんの態度が余計にそれを思い出させるから家にいるのが嫌だっつってずっと俺といた。
俺もみさきが目の届くとこにいてくれた方が安心だった。
俺はみさきをそばに置くことで自分が安心したかった
『選手になれるかそうじゃないかの瀬戸際で女連れて行って、あんた本気で選手になれるつもり?NBAでバスケしたいんじゃないの?』
『みさきがいたってできる』
『じゃあみさきの将来はどうなるの。あの子今シカゴに行ったって何もできやしないわよ。一生あんたの食事作って家で待ってるだけの人生を送らせるの!?恋人でもないみさきと一生くっついてるつもりなの!?』
返す言葉がなかった。
みさきといることが正しいと思ってた。
だからシカゴ行きが決まった時俺は最初からみさきを連れて行くつもりだった
『今離れなきゃあんたたち共倒れよ。NBA舐めてんじゃないわよ。女の世話しながらなれる程甘くないわよ』
『けど…一人にできねぇよ…俺のせいであんな目に遭わせちまって…』
『だったら尚更離れなさい。あの子にはあたしがついてる。あの子のやる気と熱意があれば必ず一流のメイクになれる。それにあの子にはメイクの才能があるの。あんたにバスケの才能があるようにあの子にも才能があるの。誰でもが持てるものじゃない。それを無駄にしてお互い依存しあってたら何者にもなれないわよ。あんたも、みさきも。今じゃなく、5年先、10年先を考えて今みさきを突き放して』
ただのメイクができるオカマだと思ってた。
でも俺なんかよりよっぽどみさきの事を考えてた。
『分かった…あいつはLAに置いて行く』
『あんたもみさきも必ず自分で道を切り開ける。応援してるわ』
俺といてみさきの努力が無駄になっちまうなら一緒にいるべきじゃねぇってそん時気づかされた。