第1章 視線の先
一通りの挨拶が終わり乾杯の音頭が取られると、一斉にグラスが鳴る。
私も右隣のさつきとグラスを合わせて、正面と左隣のゲストとは視線で乾杯を交わした。
キラキラと泡が立ちのぼるピンクの乾杯酒は見ているだけで幸せな気分にさせてくれる。
普段はあまり飲まないお酒も今日は特別。
フレッシュなローズを思わせる香りと、小さくて上品に弾ける炭酸が口に広がって披露宴開始の合図となった。
ゲストが多く晩餐会スタイルの座席で、左も正面も先生のご友人で緊張してたけれど、挨拶をしてくれたり話しかけてくれたりして、スープが提供される頃には私も先生のお友達と少し話せるようになってた。
「旦那さんものすごく素敵で玲子にピッタリ」
「選り好みしてるとタイミング逃すよって言ってたけど、結局一番素敵な旦那様捕まえたのは玲子だったね」
「同業の夫なんて最高だよね」
「ねー!ホントすっごいお似合い!」
先生のご友人達は先生の結婚を心から祝福していて、素敵な人の周りには素敵な人が集まるんだなってますます先生に憧れる。
自立してて優しくて強くて素敵な友達がいて、私も先生みたいになりたい。
披露宴は順調に進んで、ケーキ入刀では流行りのラブソングが流れ、あちこちでシャッター音が鳴ってはお祝いの言葉が聞こえる。
主役の二人の姿をみんなが写真に収めて、その度に2人と写真をみて笑い合う。
照れ臭そうな、でも幸せそうな真太郎と、満面の笑みの先生を見ていると、やっぱり結婚って素敵だなって思えた。
ずっとお世話になってきた2人だから絶対に幸せになって欲しい。
お色直しでは和装になった二人が絶えず来るゲストと嬉しそうに写真を撮って、真太郎は袴が似合いすぎてて高尾君は「殿」って呼んでた。
パパとママも絶対見たがってるし、あたしも一緒に写真とりたい。
タイミングよくこっちに来た大我を呼び止めて、誰に撮ってもらおうか周りをキョロキョロ見てたら、大我がいきなり黄瀬君を呼び止めた。
「黄瀬、悪りぃけど写真撮ってくんね?」
「いっスよ。って……え、みさきっち?!」
「こんにちは。さっき見かけたんだけどお友達といたから声かけなかったの。あたしもびっくり」
「いや、びっくりってゆうか…いつもと全然違くてずっとわかんなかったっス……」