第19章 策の網目
『失礼します。』
ガラリと開れば流れ込んでくる冷気。
やはり職員室は涼しい。と感動しつつ満身創痍の身体を動かし中に入ればそこには要件のある人物しかおらずとても見つけやすかった。
『終わりました。』
相「はい、御苦労さん。」
こちらには目もくれずなおもキーボードを叩く手を止めない。
少しだけむっとした私は働かない頭を暑さと疲労のせいにして相澤先生を蔑みの目でみる。
『本当に。お陰様でヘトヘトです。よくみんな倒れませんでしたよ。』
相「草むしりだって言ってんのに遊んでるお前らが悪い。罰があって当然だ。」
『遊ぶように仕向けたのはどちら様ですか?』
ここで初めて目が合う。
先生は椅子を回転させ身体ごと向き合った。
相「俺は草むしりをしろと言ったはずだが?」
『えぇ。そして必要な道具を渡してくれました。スコップやゴミ袋など。』
相「何が言いたい。」
いつもと違う雰囲気を察したのか相澤先生は眉をひそめる。
『その中にはホースもあったんです。地面を濡らした方が草を抜きやすいからとも考えましたがそれは余計に抜きづらくなる。作業において必要でしょうか?』
相「俺はただ道具が入ったカゴを持ってきただけだ。」
『用務員さんは道具に付いた水滴で室内が濡れると困るのでホース類は校舎外に置くと言っていました。』
相「あー持って行くときに入れたんだな。」
『合理的主義の相澤先生がわざわざ使わないホースを運びますか?』