第15章 個性にもほどがある
物間寧人君の手の内にある鍵を取ると、またね。とその場を去ろうとした。
物「待って!」
ふいに手首を掴まれた。
反射的に後ろを振り向けばそのまま手首をグイッと引かれバランスを崩す。
図ったかのように彼に受け止められたが側から見れば抱き合っているようにしか見えない。
物「僕も君を見ていたよ。君は儚げに見えてとても芯がある人だ。それに気付いてからは自然と君のことを目で追う毎日だ。僕のこの感情は何と言うんだろうね。」
突飛な物言いにどうすることも出来ずただ立ち尽くす。
物「ごめん、混乱させてしまったみたいだね。とりあえずはお互い下の名前で呼ぶことから始めよう。」
『寧人、君……。』
働かない頭は素直に彼の言う通りに従った。
それに返事をするように彼もまた私の名前を呼ぶ。
気がつけば彼の顔が目の前で。
あぁ、キスされる。と覚悟した瞬間目を瞑った。
チュッ
だが温もりは唇には触れることなく頬を掠めた。
物「まだしないよ。いつか、正真正銘の恋人になった時だ。」
今度こそまたね。と廊下まで見送ってくれた寧人君はその日一日中、私の頭から離れてはくれなかった。
END