第14章 近くて遠い
『あれ?上鳴どこ行くの?入場券売り場あっちだよ?』
水族館の入り口。
そこに向かい意気揚々と進む上鳴がニカッと白い歯を見せ懐から取り出したのはまさにその入場券だった。
上「前もって買っといたんだよ。今日はをエスコートするって決めたからな!」
彼女は瞠目したのち呟いた。
『どうしよう。上鳴がカッコいい…。』
上「通常営業だわ!!」
ほら、行くぞ。と差し出された手はいつもより男らしく見えた。
上「まずは西エリアを踏破するぞ!」
『うん。』
上「クラゲやペンギンコーナーが特に人気なんだってさ。」
『そうなんだ。』
上「ん?どうした?腹でも痛いか?」
『なんでもないから大丈夫。』
どうしてそこで腹が痛いというワードが出てくるのか。
具合でも悪いか?と聞くのが正解だと思う。
やはりこの辺りが上鳴が残念な理由だろう。
上「?……そうか?なんかあったら言えよな!冗談抜きで俺が殺されちまう(笑)」
言えない。
高校生にもなって恋人繋ぎに緊張しています、だなんて。
なんだか今日は頼もしく見える彼が悪いのだ。
心の中で悪態を吐くもなお鼓動は治らない。