第11章 年越し蕎麦
『美味しいですか?』
相「あぁ、美味い。あいつが選ぶだけあるな。」
『ゼリー飲料に比べたら全部美味しいと思いますけど。』
相「一番合理的なだけだ。」
『来年はちゃんとご飯食べましょうね。』
相「お前らが面倒かけなければな。」
はぁ、と溜め息を吐いた相澤先生の視線の先にはぐったりしている上鳴君の姿。
『……で、飯田君は何してるの?』
飯「除夜の鐘を聞く準備だ!」
『ラジオで?』
飯「毎年家族でお寺まで聞きに行ってたのだが、流石に今年はそうもいかない。その事を緑谷君に相談したところラジオでも聞けると教えてくれたのだ!」
『なるほど。そんなに煩悩を払いたいんだね。』
飯「君達には迷惑をかけてばかりだからな。委員長として努めて冷静で居なければならない。」
『……偉いね。でもそれじゃ飯田君が苦しいでしょ?何かあった時は相談してよ。いつでも力になるから。』
飯「君……!!ありがとう!!!」
くぅぅーっと顔に腕を当て泣いている彼を見届けたあと向かったのは本日の功労者。
『お疲れ様。』
轟「も手伝ってくれてありがとな。」
お行儀よくキッチンカウンターに一人で座る彼の横に腰をかける。
『元はと言えば私が言い出しっぺだしね!』
轟「俺は嬉しかったぞ。」
『みんなとお蕎麦食べられたのが?』
轟「いや。自分の作ったもんを美味しいと言ってもらえるのはいいな。」
手元にある蕎麦をじーっと見ながら微笑んだ。
自分の箸を口に運ぶとゆっくりと味わい咀嚼する。
『うん。美味しい。』
轟「………そうか。俺も美味い。」
『そりゃあ焦凍が作ったんだもん!美味しいに決まってる!』
轟「これはが作ったやつだ。」
『ゆっ、湯がくだけだから変わんないよ!』
轟「料理は気持ちが大事ってさっき言ってただろ?また作ってくれ。」
『う、うん。』
大好物の蕎麦である筈なのに箸が進まない。
それよりも赤い耳に髪をかけて蕎麦をすする彼女に見惚れていた。
この先も一緒に年越し蕎麦を食べたい、などと言えばもっと赤くなってくれるだろうか?
END