第2章 霽れの日は…
そして其処に居たのは必死の形相で俺に訴え掛ける領民共と、其奴らに囲まれた。
口々に勢い良く紡がれる領民共の言葉を要約してみると……
はあの豪雨の日以来、常に領民共と生活を共にして野良仕事に精を出し、父御の悪行を詫び続けたという。
どんな辛い状況でも明るく快活に振舞い、美しい容姿が汚れる事も厭わないに領民共は何時しか心を許した。
そんな中の腹が膨らみ始め、心配した領民共が問い詰めてみれば、織田信長の稚児だと言うではないか。
それではこんな下賎な生活をしている訳にはいかぬ……
俺にを娶り、稚児を産ませてやってくれ……という事らしい。
「……くっ…は…はははははっ……」
俺は堪らず大声で笑い出した。
領民共に押し出される格好で俺の目前まで歩み寄ったの顎を右手で捉え上向ける。
「随分と慕われたものだな、。」
「………お陰様で。」
悔しそうに……いや、照れているのか?
俺から目を逸らし頬を赤く染めるが何とも可憐しい。
良く良くその姿に視線を這わせてみれば、雪の様に白かった肌は日に焼けて狐色となり、白魚の様であった美しい指は傷だらけだ。
どれ程の野良仕事を熟して来たのか……
そんなの変わり様は痛い程に俺の胸を締め付けた。
の細い肩に腕を回し自身の胸に力強く抱き寄せてから、俺は腹の底から声を張り上げる。