第5章 ごめんなさい。
初め、この業者は値段が安いから不安だったが全く他の業者と変わらない、むしろいい業者のそれだ。
第一印象もいい。(ミケは人見知りなのだろう。それは判断基準としては見ていない)
何よりこの顔、肉体美!!何故こんなモデルのような二人が格安引越し業者に!?
ユリアはやり残しがあった寝室のウォークインクローゼットの荷詰めをしながら一人興奮していた。
鼻息を荒くしながら、高い場所にあったダンボールを手にしようとして背伸びをするが届かない。
「く……っ、後ちょっ……と」
ユリアは少しジャンプしてダンボールを掴み着地したが、ダンボールは手から外れ、ユリアの上に落ちて中にあった物がばら蒔かれた。
「いっ……たあ……」
頭に当たって痛い。尻もちをついたまま、その場所をさすっていると、バタバタとエルヴィンが駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!?物凄い音が……」
跪いて心配するエルヴィンの距離が近い気がして、恥ずかしくなり目を逸らしながら「大丈夫です!すみません!」と手を翳した。
「手伝いますよ」
「う、ありがとうございます……」
ユリアは四つん這いになって物を拾ってはダンボールに入れるを繰り返す。
エルヴィンも無言で拾ってくれている。
ユリアはまた四つん這いで少し遠くの物に手を伸ばして引き寄せてダンボールに入れた。ふと視線を上げると、エルヴィンが焦って目線をダンボールに移して「運んでも?」と聞いてきた。
「はい、すみません。よろしくお願いします」
ユリアは膝立ちでエルヴィンに頭を下げ、小走りで部屋を去るエルヴィンを見届けた。