第22章 【合同夢】Kids under Edge
エルヴィンのためにやったこと、と言ってしまうと私の独り善がりのようだけど、反応を見ればそんなことはなかった。
録に確めもせず、2人で築いてきた絆を疑って他の男の影を見られたことが悲しくて仕方なかった。エルヴィンに感じた恐怖は簡単には拭えない。
だけど私はそれ以上に、あることに心を奪われていた。
ほんの少し前まで冷たい色をしていたエルヴィンの瞳が、今は明らかに狼狽えている。
いつも揺るがない芯のある瞳をしているエルヴィンが戸惑っているのだ。私のことで。
その様子を見て私は、自分の中の種が芽吹くのを感じた。
「怖かった……本当に」
「すまない、どうかしていたんだ」
「エルヴィンに喜んで欲しかったのに……」
「お前を疑ってしまったことを後悔してる」
「…………」
「俺はどうすればいい?」
私はエルヴィンの手の中にある四枚刃の剃刀を静かに取り上げる。エルヴィンは何も言わず、その視線は剃刀を追いかけた。
「エルヴィンも、私と一緒にしちゃおうよ」
「は?」
「それで、おあいこだよ」
芽吹いた加虐心が、"今度は私の番だよ"と心の中で呟く。
そんなことを知らないエルヴィンは、呆気に取られた顔で剃刀から私に視線を移した。
◇◇
「動かないでね。危ないから」
「…………っ」
バスルームに移動して、エルヴィンをバスタブに座らせた私は泡を纏わせたエルヴィンの股間に剃刀を当てる。
上から息を飲む音が聞こえた。
男性にとって急所となる部分に刃を当てられているのだ。それがいくら信頼する妻とはいえ怖いはず。
陰茎と睾丸のすぐ横に、ゆっくりと剃刀を走らせる。刃に絡む金の陰毛を、時々お湯で流しながら剃り進んだ。
エルヴィンの表情を伺うと、見た事のない顔をしていた。恐怖と困惑と羞恥が入り乱れている。
私と目が合うと、「余所見しないでくれ……」と酷く弱々しく呟いた。
間違えて傷つけちゃうかもしれないもんね。
自分の采配ひとつでエルヴィンの感情を揺らせることが、素直に楽しいと思えた。