第21章 器の守護者
それから更に時は流れた。
調査兵団がマリア奪還作戦を決行すると、街で騒がれていた頃。俺は畑仕事をしていたときに、帰ってきたユリアにそのことを聞いた。
そう話すユリアの腹は、見るからに大きくなっていて。
聞いた話によれば、団長はユリアの為に、俺に生きていてもらうために兵団から除籍させる処分を下したのだそうだ。俺がアレを覗いたのも、俺が嗅ぎ回っていたことも、全てお見通しだったんだ。だからあの日、俺が来ると分かってて団長室の施錠を……。
「はっ……。愛されてるな」
「……ううん。団長は、最期まで……私を愛してはいなかった。私はただ、タイミングが合って、たまたま彼の子孫のための器になっただけ。私はそれでもいい。私はその使命を全うするだけ。彼の子孫が今、私の腹にいる。その事実があるだけで、充分。こんなに光栄なことは無いわ……。この子が産まれたら、私は一生をかけて、大切に育てていく」
ユリアは愛おしそうに腹を撫でた。
「そうかよ」
ユリアも、エルヴィン団長も、可哀想だと思った。
「……ユリア、俺と結婚してくれ。お腹の子も、お前も……絶対に、幸せにするから」
来年の春先には、腹の中の赤ん坊は産まれるらしい。その頃に俺達も、結婚する。
-第21章 Fin-
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