第20章 バス停留所にて
まずい、寝過ごした。
目が覚め焦って下車した場所は、私の知らない場所だった。
「……ここは」
土砂降りの雨。周りは田畑、山。
ボロボロの停留所。なんとかこの雨を凌げるくらいのもので、白く塗られていたであろう壁や椅子は木の地肌が見え、だいぶ前に選挙に立候補した人物のポスターがふやけて剥がれかけている。
ゲリラ豪雨のような雨は、土道を跳ね上げ、景色を白ませていく。
「今日はついてないな……」
気持ち程度のハンカチをカバンから取り出した所で、水を跳ね上げながら走る足音が聞こえて停留所の中へ人が駆け込んできた。
「はあっ!!あ……」
「どうも、凄い雨だね」
その人物はブラウスに黒いスカートの女子高校生だった。ふと見たブラウスは雨で肌に密着し、下着が透けて見える。
思わず見てしまったが、罪悪感に目を逸らして自分に使うつもりだったハンカチを彼女に手渡した。
「良かったら使ってくれ、気持ち程度しか拭けないかもしれないが」
「いえそんなっ……私なら大丈夫です!」
「いいから」
半ば強引に手渡すと、女子高校生は礼を言って頬と首筋にハンカチを軽く当てた。
「君はこの辺りに住んでいるのか?」
「はい、ちょっと歩かなきゃいけないんですけど」
「何故ここに?その制服を見る限り街の方にある高校だろう。ならもう下校して何時間か経つ。家もこの辺りならここに用事は無いはずだ。しかもこの雨だしな」
初対面の高校生相手にこんなに物を言うなんて余裕が無さすぎる。ほら、困っているし確実に不審者扱いだぞ。